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【識者の眼】「新型コロナウイルスが子どもに与えている影響」小橋孝介

No.5074 (2021年07月24日発行) P.56

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-07-01

最終更新日: 2021-07-01

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長期にわたる新型コロナウイルス感染症の流行は着実に子ども達に影響を与え続けている。2021年5月に国立成育医療研究センターコロナ×こども本部の行った第5回アンケート調査の結果が公開された(https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/digestreport_05.html)。この中で、子ども達のからだの健康は第1回調査から経時的に低下傾向にあり、こころの健康も小学生では不良のまま大きく変化なく、中高生にいたってはさらに悪化傾向である可能性が示された。この結果は、今年2月に文部科学省が発表した「コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状」(https://www.mext.go.jp/content/20200329-mext_jidou01-000013730_005.pdf)で示された中高生の自殺数の増加傾向にも一致する。

様々なストレッサーに対する心身の反応は、どんな人にも起こるものである。私達は多くの場合、それぞれの持つ保護因子やコーピングスキルによって、こういったものに付き合っている。上記のような子ども達に見られる傾向は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって様々な学校行事が奪われたり、家庭の経済状況が悪化したり、生活環境が変化したことで、従来、子ども達のストレスコーピングの中で保護的に働いてきた家族、友人などとの人間関係が変化し、生活環境の不安が増大していることなどが大きく影響していると考えられる。

小児科臨床の現場でも、慢性の頭痛や腹痛などで受診し学校に行けなくなっている子ども達が増えている。これらも、その背景には新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う影響があると考えられる。この中で医療者は、その症状を否定せず、子どもの声に耳を傾けながら、biologicalな部分だけではなく、psycho-socialな側面にも視点を広げる必要がある。その上で、「こころの病気」と片付けてしまうのではなく、適切な地域のリソースにつなぎながら、それらと協働して子どもと家族に関わり続けることが求められる。

*近年小中学校にはセラピストであるスクールカウンセラーだけでなく、福祉的な視点で子どもと家族に関わるスクールソーシャルワーカーの配置が進んでいる。また地域ではすべての子ども家庭に関する相談に対応する子ども家庭総合支援拠点の市町村での設置も進んでいる。

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待]子ども家庭福祉[新型コロナウイルス感染症][自殺]

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