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【一週一話】フレンチパラドックスの謎を解く

No.4724 (2014年11月08日発行) P.41

中村保幸 (京都女子大学家政学部生活福祉学科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-17

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  • 疫学研究Seven Countries Studyは地域の平均飽和脂肪摂取量や血清コレステロール値が高いほど,その地域の心筋梗塞死亡率が高いことを示した。一方フランスでは,飽和脂肪摂取量が高いにもかかわらず心筋梗塞死亡率が北欧諸国などと比べて低いことがわかった。これをフレンチパラドックスという。理由は,フランスではワイン,特に赤ワインの消費量が多いからとされた。

    複数地域の人口集団を対象に,危険(曝露)因子と疾患発症・死亡率との関連を記述して危険因子と疾患の因果関係を求める方法を生態学的研究と呼び,フレンチパラドックスも生態学的研究結果から提唱された。個人レベルでは様々な食品・ワインの摂取量や血中コレステロール値があるにもかかわらず,国全体の平均値を曝露因子とし,国全体の平均発症・死亡率を従属(結果)因子として用いるため,結果の解釈には注意を要する。特に個人で異なる交絡因子の違いを検討することができないため,系統的過ち(生態学的誤謬)が生じることは避けられない。たとえば気候,寒暖の差,摂取食品,飲酒頻度,運動,喫煙など多くの因子は心筋梗塞発症・死亡率に大いに影響を与えるが,生態学的研究ではこれらの影響を考慮できない。また,食品・ワイン消費量には廃棄量が考慮されていない。廃棄量は原則として裕福な国ほど多い。

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