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【識者の眼】「日本初、小児科専攻医のためのアドボカシー教育プログラム(CHAT)の経験」小橋孝介

No.5060 (2021年04月17日発行) P.63

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-04-05

最終更新日: 2021-04-05

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小児科専門医の医師像の一つにも挙げられているアドボカシーを通して社会と協働できる小児科医を育てるため、全国の小児専門病院を中心とした小児科専門医研修施設8施設の小児科専攻医を対象として、「小児科専攻医のためのアドボカシー教育プログラム(child advocacy training:CHAT)」のパイロット版全4回が2020年12月〜2021年3月にかけて開催された。

アドボカシーは、「誰が」声を代弁するのかという視点で主に以下の5つに分類される。医師や弁護士など専門職によるアドボカシー(formal advocacy)、一般市民によるアドボカシー(informal advocacy)、仲間によるアドボカシー(peer advocacy)、子どもの意見表明支援員等の独立アドボケイトによるアドボカシー(independent advocacy)、本人によるアドボカシー(self advocacy)である。我々医療者は主にformal advocacyに関わり、個人や家族を対象とするミクロなレベル(individual advocacy)から、地域や国レベルの政策提言や制度改革に繋がるメゾ・マクロのレベル(community advocacy/state and federal advocacy)まで様々なレベルで声を代弁し、届けていくことが望まれている。そのプロセスの中で、多様な職種と協働し、地域と関わることも求められる。

米国の小児科専門医研修の中では独立した研修としてアドボカシー・トレーニングが行われている。しかしながら、日本ではその様な取り組みは今までなかった。今回のCHATは国立成育医療研究センターの余谷暢之医師を中心に全国の若手指導医がプログラム作成に関わり、日本で初めてのアドボカシー・トレーニングプログラムとして開催された。

このプログラムの中では、コントロール不良の喘息や過敏性腸症候群などの模擬症例からどのようにアドボカシーへ繋げていくのかについてグループワークを行ったり、その過程で、各自の施設に勤務する医療ソーシャルワーカーや臨床心理士、その他子どもに関わる多職種へのインタビューを行ったり、実際に国レベルで法律制定に向けた活動を行ってきた先達からの講義を受けたりした。こうして、日々の臨床の中でもアドボカシーの視点を持つことで、その声をミクロからマクロまで様々なレベルに届けることができることを学ぶ構成になっている。今後、今回のパイロット版の結果も踏まえ、参加者の規模も拡大して継続される予定である。筆者もファシリテーターの一人として関わり、参加した専攻医の行動が目に見えて変化する様子を目の当たりにし、アドボカシー教育の重要性と必要性を強く感じている。

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[アドボカシー][小児科専門医][子ども家庭福祉]

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