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「デュアルタスク─認知症は歩くだけで 良くなるか」[長尾和宏の町医者で行こう!!(63)]

No.4811 (2016年07月09日発行) P.18

長尾和宏 (長尾クリニック)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-23

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  • 歩行と海馬

    たまにゴルフ場に行くと、雨でも真冬でも早朝から元気な高齢者が集まっていて、そのエネルギーに圧倒される。男性の平均寿命は80歳である。しかし、同じ80歳の朝でもデイサービスの送迎車とゴルフ場の喫茶室では熱気が全く違う。もし自分が80歳まで生きられたとしたら、果たしてどちらの姿なのだろうと想像している。なぜ、ゴルフ場に集う高齢者はあれほど元気なのだろう。そして認知症800万人時代にもかかわらず、ゴルフ場に集う80歳はなぜボケていないのか。そして憎いことにゴルフも上手いのだろうか。

    最近の脳科学研究では、歩行が海馬の血流を増加させることが分かってきた。ラットをランニングマシーンに乗せて歩かせたところ、海馬の血流が増加したという。短期記憶のとりあえずの貯蔵庫である海馬の機能が高まるということだろう。さらに脳の神経細胞は運動により再生されることも分かってきた。運動をすると「神経栄養因子」という新たな神経細胞を生み出す物質に加え、血管には「血管内皮細胞増殖因子」も放出されるという。つまり、歩行は海馬や脳の神経細胞も血管内皮もリニューアルするという。なるほどゴルフ場に集う80歳台の不思議が科学的に解明されつつあるようだ。たとえ年齢相応のボケやMCI(軽度認知障害)があったとしても、運動習慣が本物の認知症への進展を阻止しているのではないか。

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