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【識者の眼】「学術会議と五輪組織委員会、そしてコロナ禍」邉見公雄

No.5054 (2021年03月06日発行) P.64

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2021-02-18

最終更新日: 2021-02-18

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菅内閣になって我が国の劣化が浮き彫りになってきている。時系列で述べると、日本学術会議では推薦名簿から恣意的に6名の方々が落とされた。忘れっぽい国民性に乗じて終息させたいと思っている節も窺えるが再び蒸し返したく一筆献上する。落とされた方々は政治学や社会学の泰斗で、政府の政策に異議や反対を表明した方達であった。総合的俯瞰的判断というものらしく、議論を学術会議のそもそも論にすり替え、予算や人員を減らす兵糧攻めに出ている。習さんや金さんを見習いたいのが本心ではと空恐ろしい。

最近では森氏の女性蔑視発言騒動。ジェンダーギャップの少ない国別ランキングで日本は120位以下で下から数える方が早く、森氏だけの問題ではない。国全体としての問題が噴出した感すらある。これは女系天皇の問題を始め国会議員や会社役員に女性が少ない等々長い歴史があり、一朝一夕には解決できない根の深い問題である。ここでも首相は、組織委員会の問題だからと丸投げし逃げたように私には思える。学術会議を一任し組織委員会を総合的俯瞰的に判断するのが国益に利するのではなかろうか。残念至極である。

コロナでは先進国との格差が更に広がっているのではとの老爺心が募る。コロナがさらけ出したものを列挙する。

▶IT化の甚だしい遅れ…韓国や台湾から1周、米中の背中見えず▶非正規雇用の想定外の多さ▶一般家庭の所得に対する大学学費の高さ…国立でも2人は無理▶縦割り行政の弊害が顕著に…厚労省はPCR検査を文科省管轄の大学医学部には依頼せず(島田眞路山梨大学長の御指摘通り)。ダイヤモンド・プリンセス号の患者入院までの経緯を見ても然り▶国民安全保障の視点皆無…マスクやガウン、手袋、消毒液、人工呼吸器など殆どは外国依存。重要物資の生産と備蓄は国の責務。次に来るのは食糧危機▶化学技術の衰退…ワクチンやコロナ治療、薬液100%使用出来る注射器などの国産化はいつ?▶保健所業務や重症病床の逼迫…新自由主義的効率至上政策が裏目に。医療や教育はハンドルの遊びと同様にゆとりが必要。現在の診療報酬はハイリスクローリターン▶三位一体の改革後でなくて良かった…地域医療構想再検証指名436病院中90以上の病院がコロナ患者受け入れ。働き方改革後であればICU患者は入院不可能。

以上が今回のコロナ禍の現場や後方で見たり感じたことの雑感である。当誌読者諸兄姉はどう感じられたかご意見をお聴かせいただきたい。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[我が国の劣化]

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