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【識者の眼】「緊急事態宣言の解除に向けて今、自治体がすべきこと」和田耕治

No.5048 (2021年01月23日発行) P.54

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-01-12

最終更新日: 2021-01-12

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今回の緊急事態宣言の解除の目安として、東京都の場合はステージ4とされる新規感染者数1日当たり500人を平均で下回ったら、という発言を西村康稔経済再生担当相がされたという報道がある。これについては「甘すぎる」「不十分」との批判があるが、決して間違っている訳ではないと筆者は考えている。

地域の感染対策の主体は、都道府県である。これまで大阪府や北海道など厳しい状況があったが、先手を打って、飲食店に時短要請などをして、なんとか感染のピークを越えた自治体もある。

それ故、500人を平均で下回ったら、そこからは都道府県が主体となって感染対策に取り組むことになる。もちろん、さらにどこまでを目標とするのかは議論がある。筆者はこの機会に東京都では1日100人を下回る程度にまで感染者を減らすことを期待している。

そのために大事なことは、都道府県が「主体」となって、特に政令市なども含めた形で今後も感染対策を意思決定し、実行していくことである。意思決定には、地元の専門家と連携する必要があるが、都道府県によってその人的リソースには差がある。また、そうした人的リソースが上手に機能しているところとそうでないところの差も大きい。

さらには、市民により選挙で選ばれた知事と市町村の首長との関係が必ずしもよくない、行政機関の連携が悪いといった様々な課題が重くのしかかっている。こうした点を解決せずして、都道府県がリーダーシップをとって対策を実行できるのかについては、市民の側からもチェックが必要である。

都道府県においては、約1年の疲労がたまっている。一方でノウハウも蓄積されつつある。経済や雇用の点から厳しい対策を打ちにくいところもある。既に災害対策で「ハネムーン期」と呼ばれる自然に連帯できる状況ではない。また、一部に「コロナは、かぜ」といった捉え方をしている市民のリーダーがいて、感染拡大の場を容認していたりする。

緊急事態宣言の間は、「感染が収まることを祈って待つ」ではなく、今から、どこまでこの機会に感染者を減らすのか、政府、各自治体の目標のすりあわせ、そしてそこに向けた連携や連帯、市民への説明による納得感を得ること—そうしたことがなされないと、ただ単に長引くばかりか、市民からの行政への信頼感が失われ、対策の効果が得られなくなる。

現在はピンチである。しかし、信頼感を高めるというチャンスでもある。そうした心構えで都道府県や市町村には対話を至急深めてほしい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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