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【識者の眼】「カルテの削除請求に応じる必要はあるか?」川﨑 翔

No.5048 (2021年01月23日発行) P.62

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)

登録日: 2021-01-12

最終更新日: 2021-01-12

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顧問先のクリニックから「カルテの開示請求を受けたがどうしたらよいか」という相談は意外と多いです。医療事故のケースばかりではなく、交通事故の後遺障害の立証や遺言作成時の意思能力の立証など、患者側の弁護士から開示請求を受ける場合もあります。医療機関は、患者から請求があった場合、原則としてカルテを開示する義務があるので、私が医療機関側の窓口になるなどして、速やかにカルテ開示に応じるようにしています。

一方で、患者から「自分のカルテ等の個人情報を削除してほしい」という要望を受ける場合もあります。「検査結果が自分の意に沿わないものであった」「主治医と治療方針等が合わなかった」などの事情によるものです。カルテの情報も当然「個人情報」に該当します。本人は、データが「事実でないとき」に「訂正、追加又は削除」を請求することができると法律上規定されています(個人情報保護法29条1項)。

つまり、上記のような「検査結果が自分の意に沿わないものであった」とか、「主治医と治療方針等が合わなかった」という理由では、データが「事実でないとき」には該当せず、「訂正、追加又は削除」を請求することはできません。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則9条ではカルテの保存義務が規定されています。その上、カルテの内容は医療機関が適切な医療行為を行ったことの証拠であるほか、診療報酬請求の根拠となるものです。

したがって、このような場合には、カルテの削除に応じる必要はないということになります。具体的な対処法としては、患者側に削除を求める理由を確認しつつ、カルテに記載された情報が「事実でない」という場合でない限り、削除に応じないというかたちになると思います(よほどの事情がない限り、カルテに記載された情報が「事実でない」というケースはありえないと思いますが)。

なお、個人情報保護法29条3項では「訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む)を通知しなければならない」と規定されているので、削除に応じない場合、その旨を患者に通知する必要があります。

川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]

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