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【識者の眼】「アクションプランのその先は」具 芳明

No.5049 (2021年01月30日発行) P.60

具 芳明 (国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)

登録日: 2021-01-08

最終更新日: 2021-01-08

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この連載では薬剤耐性(AMR)対策について解説してきた。日本では2016年に発表された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」のもとで対策が進められてきた。現行のアクションプランは2020年までとなっているが、政府は引き続きAMR対策に力を入れていく方針を示している。今後はどのような取り組みが必要なのだろうか。

まず、ここ数年で充実が進んだ各種サーベイランス(抗菌薬使用量、薬剤耐性菌、院内感染対策など)の活用を進めていく必要がある。道具があっても活用しなければ意味がない。サーベイランスで各病院や地域の現状を把握し、それを踏まえて対策と評価のサイクルを回していくことができるかどうかで感染症診療や院内感染対策の差が大きく開いていくことになるだろう。地域連携の重要性は言うまでもない。

抗菌薬が最も多く使われている場は診療所である。しかし、診療所は病院と違って抗菌薬使用量や耐性菌のサーベイランスはあまり行われておらず、多職種によるフィードバックがかかる仕組みもない。そのため、感染症診療の内容が評価される機会は少ない。診療所はこれまでも抗菌薬適正使用の最も重要な場とされてきた。それを支援する仕組みの検討が進むことになるだろう。

2019年のセファゾリン供給トラブルを機に抗菌薬の安定供給が注目されている。必要な抗菌薬が安定的に供給されることがなければ適正使用は不可能である。創薬に向けた取り組みに加え、既存抗菌薬を確保するための対策が始まりつつある。これを確実に進めることは今後の大きな課題である。

感染症危機管理が重要なテーマだと改めて認識されている今だからこそ、AMR対策を確実に続けていく必要がある。アクションプランのもとで進歩しているがまだまだ課題も多い。本稿で述べきれなかった課題もある。今後もAMR対策に関心を持ち、それぞれの立場でできることに少しずつ取り組んでいきたいものである。

具 芳明(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)[AMR対策]

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