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【識者の眼】「地域の医療関連データを適切な意思決定につなげるために」小林利彦

No.5044 (2020年12月26日発行) P.62

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-12-04

最終更新日: 2020-12-04

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地域医療を語る上で必要なデータや情報は数多くある。地域の医療圏を構成する人口やその年齢構成に始まり、人口分布ならびに移動時間等はその地域で求められる医療の在り方を左右する。また、気候条件や生活習慣のほか地域住民の健診・検診受診状況などは医療施設への受療率とも関連しやすく、その地域の将来予測人口から推計される医療需要が地域医療構想の根拠となっていることはよく知られている。一方、医療供給サイドから見ると、地域の医療施設等の設置状況とともに、医師や看護師などの確保状況が地域の医療提供体制に大きく影響することは明らかである。実際、人口10万人あたりの医師数や看護師数などがこれまで医療提供体制の実状を示す指標としてよく用いられてきた。ちなみに、地域における医師数や看護師数などを決定する要因として医学部を含む専門学校等の配置状況や地理的環境がよく問題視されたが、これからはインターネットを活用した教育環境の整備や働き方改革への取り組み状況なども重要になるのは間違いない。

医療機関においても各種の診療データや医療情報等は利活用されており、病院運営ならびに経営面での意思決定につなげられている。具体的には、外来患者数・入院患者数・紹介率・救急車搬入数などのほか、病床稼働率や平均在院日数、診療単価などの実績が定期的にフォローされ有効活用されている。また、近年、中規模以上の病院では電子カルテが標準整備されており、診療データを経営指標としてのみ捉えるのではなく、医療の質を評価するための臨床指標としての活用が注目されている。実際、臨床指標の中には生存率や死亡率といったアウトカム指標だけでなく、ガイドライン等の遵守率といったプロセス指標などが含まれるが、近年は他施設とのベンチマークが推奨されており地域レベルでの情報共有も期待されている。さらに、地域住民が自身の診療データに直接アクセスできる仕組み作りも国策として進められており、医療機関内の診療データが地域に情報開示されていく方向性も見えてきた。

このように、我々には地域医療を語る上での様々な医療関連データが与えられていることに気づくとともに、それを適切な意思決定につなげられる優秀な人材を地域にて確保・育成していくことが期待される。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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