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【識者の眼】「真の費用対効果を考える(各論その7)〜NNTとNNHについて」三宅信昌

No.5040 (2020年11月28日発行) P.56

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2020-11-16

最終更新日: 2020-11-20

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今回は、ある薬剤の効果判定において、いかに医療経済的効果があったか否かを判定する指数として、治療必要数=number needed to treat(NNT)と害必要数=number needed to harm(NNH)について解説させていただきます。

NNTは、あるエンドポイント(死亡や疾患の発症や疾患調整)に到達する患者を1人減らすために、その薬剤を何人に投与する必要があるかを示した数字です。

現実例では、①ステロイド性骨粗鬆症において、ビスフォスフォネート剤を9人に投与したことにより、椎体骨折を1人減少させるので、NNTは9です。②同様に脳梗塞予防として、降圧剤投与のNNTは7937、ACE阻害剤は1万1111、スタチン系は1万3333で、約8000人から1万人以上に投与した事で1人の脳梗塞発症を予防できるという指数になります。③関節リウマチでACR50をエンドポイントとした場合のNNTは、インフリキシマブで5、エタネルセプトとアダリムマブは4、アバタセプトは5となっています。④抗うつ剤の神経障害性疼痛効果のNNTは三環系抗うつ剤では3.1、SSRIで6.8、SNRIは5.5となっています。NNTの数字が少ない方が、臨床効果があると思われがちですが、エンドポイントの設定によりNNTの持つ意味は変わってきます。

また、NNTから考慮した、心疾患での死亡を1人減少させるために要する年間医療費はアトルバスタチン(10mg)で5.6億円、プラバスタチン(10mg)では5.1億円、シンバスタチン(5mg)は5.8億円となっています。

NNHは何人の患者に治療すると、1人の有害症例が出るかの指数です。これは数字が大きい方が安全性が高いという事になります。例えば骨粗鬆症の薬剤であるビスフォスフォネート剤を1万人に投与して、顎骨壊死を1人に生じた場合は、NNHは1万という数字です(ちなみに国際顎骨壊死コンセンサスペーパーのNNHは1万~10万とされています)。

ある薬剤のNNTとNNHを同時に示すことで、その薬剤の効果と安全性を同時に判定できるというメリットがあります。また薬剤費を入れる事で他の疾患との比較も可能となり、医療経済的に有意義な指数となります。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬関連]

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