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【識者の眼】「真の費用対効果を考える(各論その6)〜ICER(増分費用対効果)とWTP(支払い意志)」三宅信昌

No.5036 (2020年10月31日発行) P.58

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2020-10-12

最終更新日: 2020-10-12

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前月(No.5031)では、各疾患のICER(増分費用対効果)について解説させていただきました。欧米およびアジア各国では、ICERを使い医療技術的に評価して、ある治療法や薬剤を保険償還するか否かの目安としています。

世界的には、国民1人が健康に1年間生きるために要した医療費(ICER)がいくらになるかによって、各国ごとで保険償還するか否かを国として決めることが、医療経済評価(health economic evaluation:HEE)とされています。また、各国の組織(health technology assessment :HTA)が決めたICERの金額を支払い意志(willingness to pay:WTP)と称します。

一番有名な組織はイギリスのNICE(national institute for health and care excellence)だと思います。1999年に設立され、そのWTPは約3万ポンド(日本円で約430万円)です。市販後調査からICERがこれ以上高額な場合には保険償還できないため、費用対効果が良い医薬品のみが保険適用となります。現在は適用対象の制限、例えば年齢制限や一部の疾患の除外、使用する医師集団の制限、薬価の引き下げなどの方法も模索されています。

その他の国では、▶スウェーデン: HTAはTLV(設立2002年)、WTPは40万クローナ(日本円で約470万円)▶オランダ:HTAはCVZ(設立1999年)、WTPは4万ユーロ(日本円で約495万円)▶カナダ:HTAはCADTH(設立1989年)、既存薬のWTP評価はなし▶オーストラリア:HTAはPBAC(設立1954年)、WTPは4万オーストラリアドル(日本円で約330万円)▶韓国:HTAはHIRA(設立2001年)、WTPは200万ウォン(日本円で約200万円)▶タイ:HTAはHITAP(設立2007年)、WTPは18万バーツ(日本円で約60万円)。

また、ドイツ(IGWiG)、フランス(HAS)なども採用しており、一般的にWTPはGDP比の0.9〜3.0となっています。アメリカは基本が自由診療の国なので、ワクチン治療(WTP:5万ドル)以外は採用されておりません。

日本では中央社会保険医療協議会内に費用対効果評価専門部会が2012年に設立され、2016年から新規薬剤と医療機器の一部に費用対効果評価が適応されました。日本のWTPは500〜600万円と予想されています。今後費用対効果の医療への取り組みが期待されています。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬関連]

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