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胃膵吻合の良い適応とコツ,課題について

No.5030 (2020年09月19日発行) P.49

石沢武彰 (東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科,人工臓器・移植外科講師)

髙橋秀典 (大阪国際がんセンター消化器外科膵臓外科長)

登録日: 2020-09-18

最終更新日: 2020-09-15

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  • 膵頭十二指腸切除に際して,膵離断面全体からの膵液漏出が懸念される症例などで,胃膵吻合の有利な点はイメージできるのですが,自験例に乏しいため実際に採用することにためらいがあります。胃膵吻合が最も有効と思われる症例と手技のポイント,針糸など医療機器を含む改良の余地についてご教示下さい。
    大阪国際がんセンター・髙橋秀典先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    石沢武彰 東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科,人工臓器・移植外科講師


    【回答】

     【「膵組織が脆弱で膵断端が分厚い症例」において胃膵吻合のメリットが活かされる】

    膵消化管吻合において胃膵吻合と膵腸吻合のいずれが優れているかについてはいまだにcontroversialです。胃膵吻合には様々な方法がありますが,筆者らは「膵断端陥入式膵胃壁マットレス縫合法」を用いた胃膵吻合を採用しているため,ここでは本方法について述べます1)2)

    膵液瘻の機序として,①主膵管あるいは膵断端に露出した分枝膵管からの漏出,②吻合操作に伴う膵損傷部位からの漏出が挙げられます。細い主膵管と消化管の吻合は,いまだに難易度が高いです。柿田式やBlumgart法といった膵断端と消化管壁を密着させる方法では,膵断端に露出した分枝膵管からの漏出を完全に予防することは困難です。膵断端を胃内に陥入することで,こうした膵液漏出のリスクを最小化することができます。膵実質が脆弱な症例(脂肪膵等)では,膵消化管吻合の操作(結紮等)による膵損傷も膵液瘻のリスクと言えます。筆者らは胃壁で膵を挟み込むようなマットレス縫合を用いています。厚い胃壁を結紮糸と膵実質との間のクッションのように用いて,結紮糸の剪断力が直接膵実質にかからないようにすることで,膵断端が分厚く膵実質が脆弱な症例においても結紮糸による膵損傷を最小限にすることができます。経鼻胃管・胃瘻にて内減圧を容易に行えることも胃膵吻合の利点と言えます。

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