日本感染症学会学術講演会の緊急企画として8月20日に行われたCOVID-19シンポジウムでは、これまでの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で得た教訓も話題となり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に参加する専門家から“反省”の言葉が聞かれた。
分科会の会長を務める尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は、COVID-19対策を振り返る中で「『夜の街』というレッテルを貼った初期の事例で、接待の現場よりも寮生活が重要な感染場所だったことが分かってきた。『夜の街』として一括りにし他人事と考えてしまったことで、寮生活で気をつけるべき教訓を学びそびれてしまった」とコメント。
こうした経験を踏まえ、尾身氏は、攻め込んでくるウイルスに対し先手を打つには「感染した人々を排除するのではなく、事例を素早く共有してマネージする。剣道で言う『後の先』をとることが大切だ」と述べた。
同じく分科会メンバーの押谷仁氏(東北大院微生物学分野教授)は、「“たられば”だが、もう1回、2月の初めに戻ったとして、どういう戦略をとれば(COVID-19の)最初の波による被害を少なく抑えることができたか」との館田一博氏(感染症学会理事長)の問いに対し「あの時点では感染者の国外からの流入をいかに効率よく止めるかがカギだった。もう少し早くやっていれば、あの流行をうまく制御できたと思う」と述べ、感染者の国内流入阻止の遅れを反省すべき点として挙げた。
これを受け館田氏も「あの時に『鎖国をしても』という意見もあり、『そんなのできるわけない』という議論があった。いま振り返ってみると、あの時に鎖国ができていれば、かなり抑えることができた」と述べた。
シンポの中で押谷氏は、今後の対応としてリスクマネジメントの重要性も強調。「あらゆる場でゼロリスクを求めすぎると社会・経済活動の多くを著しく制限せざるを得ない。他に数多くあるリスクと比較し、COVID-19のリスクを正しく評価すべき」と訴えた。
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