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【識者の眼】「アジアのがんセンターでのCOVID-19対策」ガテリエ・ローリン

No.5025 (2020年08月15日発行) P.56

ガテリエ・ローリン (国立がん研究センター、NPO法人日本脳腫瘍ネットワーク)

登録日: 2020-07-31

最終更新日: 2020-07-31

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、2020年初頭から、医療施設に大きな影響を与える世界的なロックダウンが発生している。免疫抑制状態にある癌患者は感染に対する脆弱性が高いことから、特にがんセンターが受ける影響は大きい。医療従事者が引き続き癌医療を提供し、癌患者とその家族が安心してそれを受けることができるようにするために、早急に癌医療全体を、この新たな不確実性の時代に適応させる必要がある。

国立がん研究センターは、アジア国立がんセンター協議会(ANCCA)のメンバーとして、アジア各国の主要がんセンターが直面している課題とその対応を一元化し、比較検討する調査を実施した(APJCC,in press)。15カ国(中国、インド、インドネシア、イラン、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、シンガポール、タイ、トルコ、ベトナム)の主要がんセンターが回答し、医療資源や人員の不足に直面しながらも、高い医療水準を維持するため、短期的・長期的な戦略を打ち出していることが明らかになった。しかしながら、感染拡大の状況の深刻さ(2020年7月28日現在、ベトナムとモンゴルでは死亡者数ゼロ、インドでは3万3425人)に関わらず、対象となったすべてのがんセンターが多大な影響を受けていた。特筆すべきは、中国、ミャンマー、ネパール、パキスタン、ベトナムのがんセンターで確立されたオンライン診断システム(感染拡大中は診療の50%以上がオンラインであったが、日本はピーク時でも10%)である。インド、インドネシアでは、患者と医療従事者の生活の質を維持するための特別な配慮がなされており(例えば、持病のある医療従事者に特別休暇を与える、または患者向けの食事および宿泊施設の提供)、癌治療の遅れを軽減することができていた。

科学的根拠が乏しい中で、長期的な意思決定と定期的なアップデートをしなければならず、国際的な癌診療ガイドラインを、アジアの特殊性を考慮しながら、「コロナウイルス後の新生活様式」の一部として導き出すことが必要である。

ガテリエ・ローリン(国立がん研究センター、NPO法人日本脳腫瘍ネットワーク)[アジアの癌医療研究連携]

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