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【識者の眼】「リハビリテーション─認知症抜きで議論を進めることはできない」東 憲太郎

No.5022 (2020年07月25日発行) P.59

東 憲太郎 (公益社団法人全国老人保健施設協会会長)

登録日: 2020-07-13

最終更新日: 2020-07-13

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前回まで4回(No. 5000、5007、5011、5018)にわたって介護保険制度の総論について述べてきた。今回から以降は「医療と介護の連携」について論じてみたい。まず1回目は「リハビリテーション」についてである。

現代のリハビリテーション(以下、リハ)は、急性期リハ〜回復期リハ〜生活期リハと機能分化を遂げている。そのうち介護保険でカバーするリハが、生活期リハとなる。生活期リハの中でも、疾患別リハビリテーション料等、一部医療保険を使ったものもあるが、多くは介護保険領域のリハと言っていい。通所リハ、訪問リハ、老人保健施設(以下、老健)への入所や短期入所がそのメニューであり、それらの多くを老健が担っている。特に短期入所療養介護については、病院・診療所、介護医療院、老健等で提供されているが、個別リハの設定があるのは老健のみとなっている。また、通所リハや訪問リハ、それに入所における短期集中リハ等を複合的に加えた老健は、強化型、超強化型として報酬上も高く評価されている。

認知症については、その薬物療法についても確立しておらず、社会問題化していることは衆知の事実である。その中で全国老人保健施設協会が開発した非薬物療法「認知症短期集中リハ」は、唯一エビデンスが明らかになっており、その有効性についても多くの報告がなされている。介護の現場では、認知症の比重はかなり大きい。現場のニーズから産まれたリハと言っても過言ではない。一方医療の現場では、過去もそして現在でも、認知症に対する意識が希薄なのではないだろうか。今後高齢者のリハを論ずる時、生活期のみならず、急性期や回復期においても、認知症抜きで議論を進めることはできない。特に回復期病床において認知症を合併した高齢者に対するリハを提供する際、認知症に対応した適切有効なリハが提供できるのか考慮すべきであろう。認知症の状態によっては、急性期→老健の方が適している場合もあると思われる。

東 憲太郎(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)[医療と介護の連携①]

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