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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:病院職員間の感染予防について」川口篤也

No.5012 (2020年05月16日発行) P.57

川口篤也 (函館稜北病院総合診療科科長)

登録日: 2020-05-07

最終更新日: 2020-05-07

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4月20日に国立感染症研究所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日のはじまりを「発病した日」から「発病した日の2日前」に濃厚接触者の定義を変更した。これは無症状の時から感染性を有するということで、有症状の人に対する対策だけでは感染を防げないのと、自分も症状が出現する前から人に伝染してしまう可能性があることを意味する。4月下旬の現在、医療機関内や施設内での感染が拡がっているが、このやっかいなウイルスの性状から、今後どこの医療機関で起こってもおかしくはない状況である。当初は病院に来る有症状患者と接する時に最大限の注意を払っていたが、今は症状の無い患者、そして職員間の接触でも濃厚接触とならない接触を心がけるとともに、すべての環境表面はウイルスで汚染されていると仮定して行動する必要がある。具体的な対策を以下に示す。

1. すべての環境表面、それを触る手、マスク表面はウイルスで汚染されていると考える

2. 手指消毒または手洗い後にどこも触っていない手以外では、口、鼻、眼などを触らない

環境表面をいくらこまめに消毒しても、消毒した直後にウイルスが付着することはあり得る。環境表面を触らないわけにはいかないので、とにかく環境表面、それを触れた手にウイルスが付着していても(仮に便が付着していると考えると想像しやすいかも)、その手で粘膜を触らなければ感染は成立しないことになる。触って良いのは手指消毒または手洗いをした直後のみである。

3. マスク表面をなるべく触らない。マスクをずらしてそのまま眼、鼻などを触らない

マスク表面にもウイルスが付着していると考えると触らない方が良い。最悪なのはマスクをずらしてそのままの手で粘膜を触ることである。普段からマスクを触っている人はとても多い。

4. 2m以内で人と話す時はマスクを着用する

5. 食事の時には2m(最低でも1.5m)間隔をあけて食べる、マスクを外しての会話は危険

6. 休憩室は3密になりやすいので、時間をずらす、適切な距離、換気、マスクを心がける

感染研の濃厚接触者の定義は1m以内に変更になったが、ここでは直接飛沫を浴びないという意味で2mという距離にした。自分が感染している際に2m以内の人に飛沫を浴びせると感染の可能性があるため、基本マスク無しでの会話を避ける必要がある。全国的なマスク不足の中でも、なんとか就業中はマスクを着用している人は多いと思われるが(数日に1枚しか配給されない職場も多いが)、休憩時間や食事の時間が最も感染の危険が高い状況である。なるべく距離を取る、2m以内で食べながら会話しないというのを徹底したい。

以上のようなことを徹底すれば、理論上は職員間での感染は避けられることになり、もし職員の一人が感染しても、多くの人が上記の行動をしていれば、他の職員の多くが濃厚接触とはならずに済む。ただし、感染者と1m以内で会話するなどの濃厚接触者とならなくても、ウイルスの付いた手で直接自分の粘膜を触ると院内感染は避けられない。これは肝に銘じるべきだろう。そのようにいくら気をつけていたとしても、家庭でも家族に対して同様に接することは不可能なことも多い(上記を職員すべてが守ることも中々難しい)ため、もし感染者が出てしまったら感染した人を責めることなく、自分も感染しているかもしれないと思う行動を常に心がけ、この難局をなんとか日本全体で乗り越えられることを切に願っている。

川口篤也(函館稜北病院総合診療科科長)[新型コロナウイルス感染症 ]

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