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【識者の眼】「日本はPCR検査を抑制しているのか?」岡本悦司

No.5007 (2020年04月11日発行) P.58

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)

登録日: 2020-03-31

最終更新日: 2020-03-31

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パンデミックが続くなか、日本の新型コロナの感染数や死亡数に注目が集まっている。欧米諸国ほど、厳しい外出禁止等の措置がとられていないにもかかわらず、感染数も死亡数も少なすぎるのではないかと。日本は、特にオリンピックを控えていたこともあり「PCR検査を意図的に抑制し、感染者数を少なくみせかけているのでは」という憶測さえ呼んでいる。

世界中にパンデミックが拡大した今、各国の検査数、陽性者数そして死亡数のデータがネット上で公開されるようになってきたので国際比較を試みた。検査を抑制し、ハイリスク者のみに限定すれば、陽性率は高くなる。だとすると、人口当たりの検査数が少ない国ほど、検査の陽性率は高くなるのではないか?

Wikipediaに掲載された人口100万人当たりPCR検査数と検査陽性率との相関を国ごとにプロットしたのが下図である(時点は概ね3月26〜28日)。人口当たりの検査数は国によるバラツキが大きく、対数目盛りにしなければならなかった。回帰直線をひくと、予想通り、人口当たり検査数と陽性率との間には負の相関がみられた(決定係数は0.16程度と低いが)。回帰直線を延長し検査数が100万人当たり100万件(=全数検査)と交わるところが現時点での全世界の陽性率と考えられる。世界中の陽性率が高まれば、直線全体が上へ押し上げられてゆく。

興味深いのは、国情の似通った韓国の数値である。日本の検査数は人口100万人当たり226件で、陽性率5.3%、対して韓国は7502件で2.4%。陽性率だけで比較すると日本は韓国の倍以上だが、韓国はドライブスルーやウォークイン検査までやった結果である(両国のプロット間の傾きは概ね回帰直線に一致)。両国ともに、既に人口の0.1%弱程度陽性者がいると考えられる。

もはや、検査を増やしたり、陽性者の感染経路を調査するよりも、既感染者からの感染拡大による感染爆発を阻止するため国を挙げて取り組むべき状況にきている。

岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部長)[新型コロナウイルス感染症]

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