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【識者の眼】「かつては“悲惨な谷間の影”と呼ばれた出生直後の児管理」久保隆彦

No.4997 (2020年02月01日発行) P.59

久保隆彦 (代田産婦人科名誉院長)

登録日: 2020-01-31

最終更新日: 2020-01-28

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「周産期医療」の「周産期」という単語は比較的新しい概念であり、産婦人科以外の医師にとっては馴染みが少ないかもしれない。狭義の定義では、「胎児が子宮外生活可能になったとみなされる妊娠週数以降、出産後7日間まで」と日本産科婦人科学会用語集にある。現在の我が国の新生児医療レベルから考えると、周産期の開始は妊娠22週に相当する。

なぜこの概念が誕生したのか。以前は、出生直後の児管理は医療管理体制の狭間であり、欧米では「shadow of the valley、悲惨な谷間の影」と呼ばれていた。すなわち、当時は産科医が管理するのか小児科医が管理するのか定まっておらず、適切な管理が新生児に実施されず、この時期の死亡率は人生で最も高いことが知られていた。分娩中、出生直後の児は呼吸・循環病態が劇的に変化し、胎内から胎外生活への適応過程中であるために少しのトラブルでも重大な障害となる。また、母体ならびに胎児の状態と管理が新生児の予後を左右することも判明してきた。

このような状況で、ドイツの産科医のザーリング先生とスウェーデンの新生児科医のルース先生は1960年代に「Perinatology」という概念を発案し、産科医と新生児科医ならびに母子に関係する医療従事者が一緒になって妊娠期・分娩・新生児期にまたがる充実した母子管理を行う必要性を提唱した。「Perinatology」という概念を元東京大学教授の坂元正一先生、元東京女子医科大学教授の武田佳彦先生らは「周産期学」と和訳した。このコンセプトの実現のために、1968年にヨーロッパ周産期学会、1980年にアジアオセアニア周産期学会、1983年に日本周産期学会、1991年に世界周産期学会が開始され、国内外にこの概念が周知された。

現在、広義では妊娠期の母体と胎児から分娩・出産後の母親と児を扱う医療を「周産期医療」と呼ぶ。本稿ではさらに拡大解釈し、妊娠前から出産後1年までの期間における種々の問題について私見を述べたい。 

久保隆彦(代田産婦人科名誉院長)[周産期医療(産科、新生児医療)]

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