アグレッシブB細胞リンパ腫の患者の一部は中枢神経系(central nervous system:CNS)再発を起こします。CNS再発高リスクの患者に対して,様々な予防治療が勧められていますが,どのような患者に対して,どのような予防を行うのがよいでしょうか?
川崎医科大学・近藤英生先生にご回答をお願いします。
【質問者】
伊豆津宏二 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科科長
【CNS再発リスクの高い患者ではHD-MTXによる再発予防を加える】
CNSには血管脳関門が存在するため通常の抗癌剤が届きにくく,CNSに再発したリンパ腫の治療は難しく,予後不良です。そのため,中枢神経再発のリスクが高い(>10%)と考えられる場合,初回治療時に中枢神経再発予防の治療を組み合わせることで成績の改善を図る試みが続けられています。
アグレッシブリンパ腫のうち,精巣原発のびまん性大細胞型リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma:DLBCL),血管内大細胞型B細胞リンパ腫は高率にCNS再発することが知られており,全例でCNS再発予防の治療が追加されます。また,DLBCLのうちCNS再発が起こりやすいタイプについては数多くの報告があり,CNS-International Prognostic Index(IPI)が発表されました1)。通常のIPI〔年齢,Eastern Cooperative Oncology Group-performance status(ECOG-PS),乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase:LDH),stage,節外〕に副腎/腎病変を加えた計6点で,低リスク(0~1点,CNS再発0.6%),中間リスク(2~3点,CNS再発3.4%),高リスク(4~6点,CNS再発14.1%)にわけられ,高リスク群にはCNS再発予防の追加が勧められます。また,いわゆるdouble-hitリンパ腫や,わが国においては乳房原発2),CD5陽性DLBCL3)も予防の対象とされます。
CNS再発の高リスク症例は,治療前に必ず造影脳MRIと腰椎穿刺による検査(細胞診,フローサイトメトリー)を行い,陰性であればCNS再発予防を組み込んだ治療を,陽性であればCNS病変も標的とした治療を行う必要があります。
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