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大動脈弁領域における最近の人工弁選択

No.4988 (2019年11月30日発行) P.51

加藤寛城 (金沢大学先進総合外科)

登録日: 2019-11-29

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【患者のライフスタイル,併存疾患,予後等総合的に判断して行う】

わが国の大動脈弁領域における生体弁の移植適応については,65歳以上で血栓性素因のない人や妊娠を希望する若い女性や出血リスクの高い人,と日本循環器学会のガイドラインにも示されており1),全国的にもそれらの人に対して生体弁を使用してきていた。

現在では,80歳以上の高齢者やフレイルの高い症例,再手術症例などリスクの高い症例に対して,経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が施行されている。最近では,TAVI用valveの改良も行われ弁周囲逆流なども減少し,high risk症例のみならず,intermediate risk症例に対してもTAVIの非劣性が示されつつあり,ますますTAVIの施行症例は増えていくと思われる。

また,生体弁による大動脈弁置換術後の再手術にTAVI(VIV)を行うようになってきていることや,生体弁の性能も上がってきている(生体弁の処理法の改良,弁口面積を広げる工夫,VIVのときに弁輪が拡大して大きなTAVI弁が入るなど)ため,欧米では50~70歳の年齢の人では,生体弁,機械弁のいずれを選択してもよい,とガイドラインに記載されている2)

そのため,今後は,わが国においても生体弁の適応年齢が引き下げられ拡大していく可能性があり,患者のライフスタイル,併存疾患,予後等総合的に判断して弁選択を行っていく必要があると考えられる。

【文献】

1) 日本循環器学会, 他:弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版).

2) Nishimura RA, et al:J Am Coll Cardiol. 2017;70 (2):252-89.

【解説】

加藤寛城 金沢大学先進総合外科

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