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患者の「(医療機関)選択の自由」は絶対か?[深層を読む・真相を解く(89)]

No.4976 (2019年09月07日発行) P.58

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2019-09-04

最終更新日: 2019-09-03

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私は本年1月に『地域包括ケアと医療・ソーシャルワーク』(勁草書房)を出版し、7月にある社会科学系学会の関東部会で、「合評会」をしていただきました。そこで、社会学の新進気鋭の研究者の評者は、地域包括ケアシステムの実態は「システム」ではなく、「ネットワーク」との私の主張に賛同しつつ、「地域包括ケアを通じた保健医療福祉等のネットワークの構築が、利用者にとっての選択の自由の余地を狭める可能性」を指摘しました。

これを聞いて、市場メカニズムによる資源配分を絶対化する新古典派経済学者だけでなく、「専門職支配」を批判する社会学者も、消費者・患者の「選択の自由」を非常に強調することに思い至りました。例えば、高名な上野千鶴子氏(社会学・フェミニズム)は、『ケアのカリスマたち』(亜紀書房,2015)で、在宅医療・介護の「プロフェッショナル」の活動を高く評価しつつ、「当事者主権」・利用者の「選択の自由」を絶対化し、「医療主導で在宅ケアが進んでいくことへの危惧」・「危機感」を繰り返し表明していました。

本稿では、患者の「(医療機関)選択の自由」は絶対ではなく、限界や制約がある理由を述べます。

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