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播種性血管内凝固(DIC)[私の治療]

No.4966 (2019年06月29日発行) P.49

池添隆之 (福島県立医科大学血液内科学講座主任教授)

登録日: 2019-07-01

最終更新日: 2019-07-08

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  • 播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)は様々な基礎疾患により引き起こされる全身性の血管内凝固障害を特徴とする。DICに過凝固状態は必ず存在するが,それと併存する線溶系の活性化の程度は基礎疾患ごとに異なる。
    DICは一般的に線溶抑制型と亢進型の2つに大きく分類され,それぞれで臨床像が異なる。線溶抑制型DICの代表的な基礎疾患は敗血症で,このタイプのDICでは血管内皮細胞にプラスミノゲン活性化抑制因子-1(plasminogen activator inhibitor:PAI-1)の発現が増加するため,プラスミンの産生が抑制される。よって,微小血栓の溶解が進まず,結果として循環障害による臓器不全をきたしやすい。一方,急性白血病を基礎疾患として発症する線溶亢進型DICでは,白血病細胞が線溶促進物質を豊富に産生するため,著しい線溶亢進とそれに伴う出血傾向を認めることが多い。

    ▶診断のポイント

    様々な基礎疾患に合併したDICを感度・特異度よく診断するために,2017年に日本血栓止血学会から「DIC診断基準2017年版」が発表された1)。基礎疾患により造血障害型,感染症型,基本型の診断基準を使いわける。フィブリン分解産物などの一般的止血検査に加えて,凝固活性化マーカーである可溶性フィブリン(soluble fibrin:SF)やトロンビン-アンチトロンビン(thrombin-antithrombin:TAT)複合体が評価項目に取り入れられた。感染症型では,急性期蛋白として上昇するフィブリノゲン値は評価しない。感染症型や基本型では血小板の継時的な減少も評価する。肝不全があると点数を減ずる。線溶亢進型ではフィブリンだけでなくフィブリノゲンの分解も亢進するため,D-dimerに比べてフィブリノゲン・フィブリン分解産物(fibrinogen fibrin degradation product:FDP)の値が異常高値となりFDP/D-dimer比が大きくなる。

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