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機能性ディスペプシア × 六君子湯[漢方スッキリ方程式(25)]

No.4955 (2019年04月13日発行) P.12

櫻井宏 (熊本市・服部胃腸科院長)

登録日: 2019-04-11

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症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がないにもかかわらず,慢性的に心窩部痛や胃もたれなど心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患を機能性ディスペプシア(FD)と呼ぶ。原因は複雑で,胃酸分泌異常,胃運動異常,内臓知覚過敏,ストレスなどが複合的に関与することが推測されている。

FDは極めて日常的疾患であるが,治療に難渋する疾患でもある。FD症状に対して,ピロリ菌陽性であればまず除菌治療が推奨されている。ピロリ菌陰性または除菌治療後も症状が残存している場合,初期治療として心窩部痛や心窩部灼熱感などの心窩部痛症候群には酸分泌抑制剤,食後のもたれ感,早期飽満感などの食後愁訴症候群には消化管運動機能改善薬が投与される。それでも改善がない場合,二次治療として抗不安薬,抗うつ薬,漢方薬などが投与される1)

心因性要因のFDにも効果的

六君子湯は胃排出能改善作用,胃適応性弛緩作用,消化管知覚過敏亢進抑制作用,グレリン分泌促進作用,食道酸クリアランス改善作用,ストレス性消化管機能改善作用などがあり,FDに対して以前より体力の弱い虚証の消化不良,食欲不振の場合に処方されてきたが,今回我々はFDに対する新しいエビデンス(DREAM Study)を発表した2)(表)。ポイントは早期飽満感,もたれ感,上腹部膨満などの食後愁訴症候群に有効であったこと,もう1つ重要なポイントは,上部消化管症状と精神症状をいずれも改善し,その改善度が相関していたことである。その効果は内服後4週,長くて8週程度の使用で認められる。背景因子では高齢者,痩せ型の女性で有効性が高い印象であり,以前から六君子湯に適した特徴を有していた。

今回の試験から,体力の弱い虚証の女性で食後膨満感,早期飽満感,腹満感など運動不全症状を有している,または不安感などの精神症状を有しているFD症例には,初期治療での効果が期待される。

 

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