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がん患者の余命予測の方法は?

No.4954 (2019年04月06日発行) P.55

瀧野陽子 (慶應義塾大学病院緩和ケアセンター)

登録日: 2019-04-05

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医師ががん患者に告げる余命の指標は、生存期間の中央値と言われています。実際にはほとんどの医師は自分の経験や勘で説明しており,当たらないことが多いようです。もう少し科学的な方法はないものでしょうか。

(大阪府 C)


【回答】

【様々なツールがあるが,あくまで「予測」で,経過中変化しうるので評価・修正の継続が必要】

各種がんの臨床研究では組織型,病期,治療介入の有無などに応じた生存期間中央値(median survival time:MST)が示され,治療選択時の参考となっています。MSTとは,ある集団で50%の患者が亡くなるまでの期間で,個人の余命を示しているわけではありません。しかし,患者・家族はMSTを「余命宣告」と誤解することがあるため,MSTについて触れる際はその意味も併せて説明する必要があります。

また,“Oxford Textbook of Palliative Medicine”1)では,MSTと余命を関連付けて説明する方法を紹介しています。たとえばMSTが6カ月の場合,「同じ状況にある患者の半数(標準的)では3~12カ月(MSTの半分~2倍),約10%(最善の場合)では2年以上(MSTの3~4倍),約10%(最悪の場合)では1カ月以下(MSTの1/6)の経過となる」と,ポイントではなく幅のある期間として提示するものです。

さて,臨床医が患者の予後予測を行う契機は様々で,最適な治療法の選択,患者の意向に応じた優先すべき目標の設定や療養先の選定など,病状や経過についての共有が必要な場合が挙げられます。しかし,医師の臨床経験に基づく予後予測が当たる(実際の±33%以内)確率は20%と低く,63%は楽観的評価だった,とする報告もあります2)。それを補完すべく様々な予後予測ツールが開発されましたが,ここではその代表例をご紹介します。

(1)Palliative Prognostic score(PaP score)3)

30日生存の予測ツールで,患者の予後が週単位なのか,月単位なのかを示します。医師の予測や呼吸困難等の臨床症状に加え,白血球数等の検査所見も評価項目に含まれるため,このツールの利用には採血が必要となります。医師の予測の配点が比較的大きいことも特徴です。また,予後予測因子として重要なせん妄症状を評価項目に加えたD-PaP scoreも開発されています。

(2)Palliative Prognostic Index(PPI)4)

カットオフ値を用いて予後を「3週以内」「4~6週」「6週以上」の3段階に予測するツールで,精度面から,より短期的な予測に利用されることが多くなっています。医師による予測や採血等の侵襲的検査を必要とせず,医療環境によらない評価が可能です。逆に,たとえば医師が採血や画像検査によって急激な変化をとらえていても,それを反映できない場合があります。評価項目に含まれる症状が治療可能な場合は,その治療効果によってPPIが変化するため,評価を繰り返すことが重要です。

(3)Prognosis in Palliative care Study model(PiPS model)5)

ウェブサイト6)で指定された項目を入力すると,予測される予後(日単位:0~13日/週単位:14~55日/月単位:56日~)と14日までの生存確率,56日までの生存確率が表示されます。上記(1)(2)よりも長期間にわたる予測が可能ですが,評価に必要な項目数は多くなっています。入力時は単位変換にも注意が必要です7)

様々な予後予測ツールが開発されていますが,予測された予後はあくまで「予測」であり,経過中に変化しうるため評価・修正の継続が必要です。余命について話し合う際は,予後予測は困難なことを率直に伝え,情報を伝えられた患者・家族の心理面に配慮しつつ,話し合った内容の理解や解釈を確認し,予後予測を行った本来の目的に立ち返ることが重要です。

【文献】

1) Glare P, et al:Oxford Textbook of Palliative Medicine(5th ed). Cherny NI, et al, ed. Oxford University Press, 2015, p65-76.

2) Christakis NA, et al:BMJ. 2000;320(7233): 469-72.

3) Pirovano M, et al:J Pain Symptom Manage. 1999; 17(4):231-9.

4) Morita T, et al:Support Care Cancer. 1999;7(3): 128-33.

5) Gwilliam B, et al:BMJ. 2011;343:d4920.

6) THE PiPS PROGNOSTICATOR.
[http://www.pips.sgul.ac.uk/]

7) 馬場美華:緩和ケア. 2016;26(5):341-5.

【回答者】

瀧野陽子 慶應義塾大学病院緩和ケアセンター

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