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警察官による一時停止違反の摘発手法は正当なものか?

No.4943 (2019年01月19日発行) P.61

岡田友佑 (日本橋小伝馬町法律事務所 弁護士)

登録日: 2019-01-16

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先日買い物のため自動車を運転中,人通りもなく自動車も通っていない四つ角で,一時停止の標識を見落とし左折したところ,直後に現れた警察官に窓を叩かれて停車を命じられ,道路交通法の一時停止違反で反則金7000円を徴収されました。この際の摘発手法について疑問を抱きましたので,以下をご教示下さい。
(1)警察官がドライバーから見えない所で観察していて,いわば隠れて違反を摘発しましたが,このような手法は正当なものなのでしょうか。
(2)警察官は摘発する前に,まず一時停止するよう指導すべきではありませんか。反則金は有無を言わさず科されますが,注意だけで許されてもよいのではないでしょうか。
(3)今後このような摘発法が検討,改善される動きはあるのでしょうか。

(長崎県 K)


【回答】

【直ちに不当とは言えないが,今後見直しの可能性はある】

(1)違反摘発手法の正当性

本件のような,物陰に隠れて違反を摘発する方法は正当なのでしょうか。

確かに,学者や有識者による懇談会において,「すべての違反を摘発できない以上,不公平感はゼロにはならない。ゆえに個々の違反者からは納得されなくとも,少なくとも取締りの理由・考え方,効果等を明らかにして,国民に取り締まりを行うこと自体を理解してもらう必要がある。その点で,警察の説明の仕方には改善の余地があるのではないか」「交通反則金収入が警察署の収入になることから警察が取締りを行っているというような誤解を払拭する必要がある」という意見も出されているようです1)

もっとも,警察としては,上記提言に対し,「交通指導取締りの効果を示すなど具体的かつ分かりやすい情報発信に努め,これらについて国民の理解を深める」(平成26年3月31日付け警察庁丙交企発第49号等)と回答するにとどまっています。

このように,警察としては,隠れた場所で取締りを行うことが直ちに問題であるとはしておらず,あくまでも交通違反が存在し,それを取り締まるのが警察の職務であること(警察法第2条1項,警察官職務執行法第2条1項)を前提として,かような摘発の方法にも一定の理解をしてほしいとの考えのようです。

そうすると,残念ながら,現時点では,本件のような取締り方法も直ちに不当であるということは難しいでしょう。

(2)摘発前の指導・注意で足りるのか?

警察官の捜査活動については,比例原則という大原則があるので,交通違反が軽微な場合には,軽微な処分ですませるべき事案もあるでしょう。自転車に関する違反行為は,自動車の交通違反と異なり反則金制度がなく,他方で高額な罰金を科すほどの違反ではないことが多いため,指導等で終わる場合が相当数あると思われます。

他方,自動車は,自転車とは桁違いの危険を伴う乗り物であり,一歩間違えれば大きな事故に繋がる恐れがあります。そのため,特段の事情がない限り,交通違反を現認された場合に指導のみで足りるということはほとんどないのではないかと思います。

本件でも,当該交差点で一時停止の標識が掲げられているということは,速度を出しやすい,時間帯によっては交通量が多い,見通しが悪い,一時停止違反が多発している等の事情があり,出合い頭の衝突事故が生じる危険性が高いのかもしれません。そうすると,事故を未然に防ぐ必要性は高くなることから,よりいっそう,指導ですむということはなくなるかと思います。

(3)摘発方法が改善される可能性

上記通達および上記提言においては,いずれも,「取締りによる交通事故抑止の効果検証に基づき取締り計画の不断の見直しを行うこと」「併せて,分析結果等をふまえ,無免許運転,飲酒運転等の悪質性・危険性の高い違反や交差点関連違反等の交通事故に直結する違反に対する重点的な取締り」を推進することとされており,取締り方法に関する今後の見直しの可能性なしとは言えません。

【文献】

1) 交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会:交通事故抑止に資する取締り·速度規制等の在り方に関する提言. 2017.
[https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/regula tion_wg/teigen/teigen.pdf]

【参考】

▶ 古谷洋一:注釈警察官職務執行法. 4訂版. 立花書房, 2014.

【回答者】

岡田友佑 日本橋小伝馬町法律事務所 弁護士

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