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インフルエンザ × 麻黄湯[漢方スッキリ方程式(20)]

No.4933 (2018年11月10日発行) P.14

黒木春郎 (外房こどもクリニック院長)

登録日: 2018-11-08

最終更新日: 2018-11-08

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インフルエンザには様々な抗ウイルス薬が使用可能である。一方,漢方薬,なかでも麻黄湯はそれらにない特徴を有する。麻黄湯はその「証」が適切であれば,単独でもインフルエンザに十分有効である。また,昨今登場した抗ウイルス薬はそれらへの低感受性株の出現も懸念される。麻黄湯ではそうした可能性はほぼない。さらに,インフルエンザに伴う倦怠感,関節痛などは漢方薬により劇的に改善する。

有効性は歴史の中で証明

麻黄湯と抗ウイルス薬はほぼ同等の効果であるとの報告はすでに多く出されている。東アジア伝統医学の古典である『傷寒論』で記載される「傷寒」は現在で言うinfluenza-like illness(ILI)といえる。この「傷寒」に麻黄剤が適応であるとされている。その伝統は1500年継承されており,有効性は歴史の中で証明されている。

ILIへの麻黄湯の作用機序

筆者らはILIに対する麻黄湯の作用機序を明らかにするため,Poly(I:C)投与により作成したILIモデルラットに麻黄湯を投与し,血液中生体一次代謝物,炎症性脂質メディエーターを網羅的に測定した1)。Pathway Deep Curationにより作成したロイコトリエン系とプロスタグランジン系のpathway mapに,網羅的測定により得られた情報を統合したところ,麻黄湯はこれらのpathways複数部位へ作用し,炎症を抑制することがわかった(図)。多成分薬剤である漢方薬の作用機序を考察するうえで示唆的な所見である。

解熱剤との併用はNG

麻黄湯の実際の使用方法は,「温服せしめて発汗させて,邪気を除く」が基本である。発熱が遷延するときは細菌二次感染などを考慮する。解熱剤は併用しない。元来,解熱剤と麻黄湯は作用機序の方向が逆である。患者さんには「漢方薬で熱が下がる」とお伝えしておけばよい。

エキス剤で処方するので,総量がエキス剤1包(2.5g)の倍数になるほうが薬局は処方しやすい。単独で飲みにくい場合は,単シロップ,ココア飲料,黒蜜,野菜ジュースなどが混合可能である。また,他の抗ウイルス薬と併用可能である。

 

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