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腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(LapPD)の今後の展望について

No.4933 (2018年11月10日発行) P.57

青木 琢 (獨協医科大学第二外科学内教授)

永川裕一 (東京医科大学消化器・小児外科学分野准教授)

登録日: 2018-11-09

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  • 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術は,2016年4月より「原則として脈管の合併切除およびリンパ節郭清切除を伴わないもの」に対して保険適用となり,実施施設数も増加傾向にあると思います。ただし,手術時間が開腹手術以上にかかることや,術者の教育の問題〔まず開腹膵頭十二指腸切除術pancreaticoduodenectomy:PDに習熟した者が腹腔鏡下(laparoscope:Lap)PDに進んでいくべきなのか,消化器内視鏡手術のトレーニングを積んだ後,開腹PDの経験を経ずにLapPDへと進んでいくのかなど〕など,検討すべき問題も存在するのではないかと考えます。
    今後LapPDはその適応を拡大し,開腹手術と同様の地位を占めるようになるのか,さらには開腹手術にはないメリットを生かして開腹手術を凌駕する可能性も秘めているのか,今後の展望に関して東京医科大学・永川裕一先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    青木 琢 獨協医科大学第二外科学内教授


    【回答】

    【導入に真剣に取り組むことが,エキスパートおよび若手外科医育成に有用である】

    (1)LapPDとは

    LapPDは,わが国で腹腔鏡下胆囊摘出術が始まり出した1994年にGagnerらが世界1例目を行いましたが,当時のデバイスは良くはなく,とても勧められない手技として報告され,しばらく報告例はありませんでした。その後,様々な臓器で内視鏡外科手術が普及していく中,2010年近くになってインドのPalanivelu,米国のKendrick,韓国のKimらがLapPDの良好な手術成績を報告し,その後,多くのエキスパートからlearning curve後のLapPDの手術成績は良好で手術時間も大幅に短縮されることが報告されています。

    当科でも現在の平均手術時間は6時間前後で導入時より大幅に短縮しつつあり,安定した技術が得られれば小さな創ですみます。拡大視効果で得られる繊細な手術を可能とするLapPDは,ロボット手術の普及も考えると,熟練した外科医が取り組んでいかなくてはいけない大切な術式と考えています。一方で,高い手術技術が必要とされるため,手術件数の少ない施設でのLapPDのmortalityが高くなる報告がされています。このため現在では,どこの施設でもLapPDを行っていくのではなく,熟練した技能を持つ施設のみで行われていくべき手術と考えられています。

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