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共有名義の土地の土砂流出防止工事費用の分担は?【共有者全員が共有持分の割合に応じて負担する】

No.4920 (2018年08月11日発行) P.67

籠橋隆明 (名古屋E&J法律事務所 弁護士)

登録日: 2018-08-08

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20年ほど前,私の父が存命中に21人の共有名義の未開発・更地の状態の土地を購入しました。亡父の持分は約0.5%。
2017年,台風で土砂が市道に流失し,共有者のA氏が土砂流出防止工事を自己資金で実施しました。本来は21人の共有者全員が応分の負担をするところ,事態の緊急性から工事の資金提供をしたとのこと。また,固定資産税については,2人の名義人の所在が不明で,調査中との連絡が市からありました。
(1)工事立て替え分への支払いは,持分による按分が正論であると思いますが,2人の行方がわからない状況で,どのように按分すればよいのでしょうか。
(2)固定資産税の按分についても,市による2人の行政確定がまず先で,それが判明してからの応分負担と考えますが,いかがでしょうか。

(広島県 K)


【回答】

民法によりますと,共有物の管理費は共有者全員が共有持分の割合に応じて負担することになっています。管理費を余分に支払った共有者は他の共有者に費用を請求できます。土砂流出防止措置の費用は管理費ですから,A氏は支払った分,他の共有者に請求できます。質問者の場合,工事費の0.5%を支払うことになります。

2人所在が不明ということですから,回収が難しいかもしれません。不在者の持分を何らかの方法で処分して,その対価から回収するほかはありません。多くは共有者が購入することになると思います。

この場合,家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらいます。不在者財産管理人は民法により保存行為(管理行為)しかできません。不在者の持分を処分するには家庭裁判所から特別許可をもらい,不在者の持分を売ってもらいます。そうして,管理費用と売買代金を相殺するという方法があります。不在者財産管理人相手に,共有物分割請求を行い,不在者の対価を払って持分権を取得するということになります。

共有物の固定資産税については,連帯納税義務といって,地方税法の規定により共有者全員が固定資産税を連帯して納税義務を負います。つまり,持分は一部でも,それぞれが全額納税義務を負うことになります。しかし,これは管理費ですから共有者間では持分に応じて分け合うことになります。誰かが支払えば,余分に支払った人は支払わなかった人に請求することになります。この場合も不在者に対する請求は上の場合と同じです。

【回答者】

籠橋隆明 名古屋E&J法律事務所 弁護士

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