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腹腔鏡下肝切除術の歴史と現状【1990年代初頭の登場以降,手技・ツールともに進化を続け,適応も拡大】

No.4914 (2018年06月30日発行) P.55

守瀬善一 (藤田保健衛生大学総合消化器外科教授)

浅野之夫 (藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科講師)

堀口明彦 (藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科教授)

登録日: 2018-06-29

最終更新日: 2018-11-28

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腹腔鏡下肝切除は1990年代初頭の報告が嚆矢とされる1)。アプローチが容易なS2,3,4a,5,6の部分切除から始まり,96年に外側区域切除が報告された。腹腔鏡用energy devicesやCUSAの開発,Pringle法の適応などに伴い,肝離断面が尾頭側方向垂直平面で腹腔鏡下の離断が比較的容易な葉切除の報告(初例97年)がなされ,用手補助(HALS)や腹腔鏡補助(hybrid)手技も適応拡大に貢献した。2000年代に入り腹腔鏡下glissonian approachとともに内側,前,後区域切除が報告され,アプローチ困難なS7,8,1に対する適応が試みられた。この間,開腹肝切除は「横隔膜下腔で肋骨の籠の中に守られた肝臓を,籠を開いて取り出して切除する」手技であるが,腹腔鏡下では「腹腔鏡と鉗子を尾側方向から籠の中に直接侵入させて行う」ことが認識された。これは新たな概念「腹腔鏡下肝切除におけるcaudal approach」として提示され2),それに伴う障害肝切除時の優位性も報告された。S7,8腫瘍には体位変換の活用,肋間ポート併用lateral approach,経横隔膜胸腔鏡approachも報告されている。一方,画像simulation・navigationや3D腹腔鏡は系統切除を可能にし,複雑な腫瘍・背景肝条件を有した症例に適応を広げる試みがなされている。

【文献】

1) Morise Z, et al:World J Gastroenterol. 2017; 23(20):3581-8.

2) Tomishige H, et al:World J Gastrointest Surg. 2013;5(6):173-7.

【解説】

守瀬善一*1,浅野之夫*2,堀口明彦*3  *1藤田保健衛生大学総合消化器外科教授  *2藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科講師  *3藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院消化器外科教授

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