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非がん臓器疾患末期のケアについてのエビデンス【呼吸困難に対するオピオイドの有効性に関して低度から中等度のエビデンスあり】

No.4911 (2018年06月09日発行) P.56

三浦久幸 (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター在宅連携医療部長)

山口泰弘 (東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師)

登録日: 2018-06-11

最終更新日: 2018-06-05

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  • がん疾患の緩和ケアについては,そのエビデンスが集積され,実践に反映されていますが,肺や心臓など非がんの臓器疾患末期の場合は終末期かどうかの判断そのものも難しく,どのタイミングでどのようなケアが必要か,臨床上,判断に困る局面が多い状況です。国内外含め非がん臓器疾患の末期のケアについてのエビデンスにはどのようなものがあるか,東京大学・山口泰弘先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    三浦久幸 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター在宅連携医療部長


    【回答】

    多くの非がん臓器疾患において,疾患末期のケアの重要性が注目されてきています。疾患末期であることの判断には,定義や基準はみられませんが,疾患の経過で高度なADL低下をきたした状態を末期としていることが多いようです。たとえば慢性心不全であれば,NYHAⅣの症状が基準のひとつです。認知症,神経変性疾患,呼吸器疾患,心疾患など様々な疾患の末期において,各疾患の機能障害そのものによる苦痛に加えて,疼痛や呼吸困難,不安・興奮・混乱が共通してみられます。

    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)を中心に,非がん臓器疾患の呼吸困難には,オピオイドの有効性に関して低度から中等度のエビデンスがみられます。そのほか,疼痛管理や疲労感に関する研究や,興奮・混乱への介入をこころみた研究があるものの,十分なエビデンスの確立には至っていません。また,質問のご指摘の通り,非がん臓器疾患末期の経過は,がんの末期の経過と大きく異なります。たとえばCOPDの呼吸困難について,どの段階からオピオイドを適応すべきかは,いまだ難しい課題です。

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