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エッセイとはすなわち、…[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(195)]

No.4902 (2018年04月07日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-04-04

最終更新日: 2018-04-03

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「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」、桜の切り花をいただいて、ふとこの言葉を思い出した。小学校から大学まで、入学の時期に桜が咲く学校は多いし、人は毎年入れ替わっていく。学校にこそふさわしい言葉かも、という気がしたのである。

原典である唐代の詩人・劉希夷の「白頭を悲しむ翁に代る」を調べてみると、そのイメージはほぼ完全に間違えていた。タイトルも、全体の意味も意外であった。

「半死の白頭翁」は「応に憐れむべし」だけれど、その翁も昔は紅顔の美少年だったのだよ、ということを説く内容で、なんとも年寄り臭い。その割に、詩はなんとなく軽やかではあるのだが、どうも学校の新年度にはふさわしくない。

それに、花は「桃李花」とあるので、桜じゃなくて、桃か李である。「桜梅桃李」という言葉があるのも知らなかった。同じような季節に咲く似た花ではあるが、それぞれに良さがある。なので、自分らしく咲けばいい、という意味がこめられている。「スモモもモモもモモのうち」などと一括りにしてはあかんのである。

エッセイにできそうなことが頭に浮かぶと、すかさずメモをする。でないと、え~っとあの時に思い浮かんだはずやけど、何やったっけ?と、後でわからなくなることがやたらと多いのである。

そうやってメモしておいたお題でも、書いてみて、これはあかんなぁ、という時が結構ある。今回も、1000字まで書いたのだがえらく冗長な感じがした。でも、ボツにするにはもったいないかと、ハーフサイズに短縮してご紹介した次第にございます。

「思いつき系」に比べると、ちょっとした出来事やら旅行やらといった「身辺雑記系」のエッセイの方が書きやすい。そのせいか、これまで200回近くのタイトルを眺めてみると、身辺雑記系がかなり多い。

井上ひさしは、「エッセイとはすなわち、自慢話である」という名言を残している。う~ん、そんなつもりはないけれど、身辺雑記系は、無意識のうちにそうなっているかもしれませんわ。スミマセン。

と謝りながらも、今回から連載5年目に突入であります。ここまできたら、永遠に書き続けられそうな気もしています。迷惑かもしれませんが、今後とも何卒ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

なかののつぶやき
「とりあえず1年ということで始めた連載ですが、すでに4年がたちました。振り返ってみれば、あっという間だったような気がします。そして、いまから4年後といえば、ちょうど定年を迎えます。年々、月日の経つのが早くなっているように思うので、その時にはきっと、最後の4年間はほんまに短かったなぁ、とか言うてるんでしょうね」

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