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医師になるには[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.117

岸本暢将 (聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Center医長)

登録日: 2018-01-08

最終更新日: 2017-12-21

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映画「パッチ・アダムス」で医学部長が新入生に対して訓示を行う場面。

「ある患者さんが人生のなかで最も恐怖に怯えている時に、医師であるあなたにメスを手渡し、先生どうか切ってくださいと頼みます。どうしてでしょうか。それは、彼らはあなたを全面的に信頼し、決して危害を与えることなどないと考えているからです。しかしながら残念な事実として、人間というのはそんな信頼には値しません。サボったり、カッとなったり、疲れてしまったり、ミスを侵すというのは人間の性です。だからこそ日々の惜しみ無いトレーニングで医術だけでなく、より人間性を高め、人間から医師になるのです」。

この名言は、上司である岡田正人先生から教わり、自身のハワイ大学での研修医時代のある経験を思い出すきっかけとなりました。当直をしていたある日、仮眠直後にコール。すぐに起こされ不機嫌な顔をしていたのかもしれません。尊敬する上級医から「どうせ診にいかないといけないのだから気持ちよくいかないと損だよ。看護師からコールが来たとき“よし”とポジティブに診察するのと、“こんな症状で起こして”とネガティブに診察するのとは、全然違う。ネガティブに診察するとイライラした態度が患者さんに伝わり、不快感や不信感、意思の疎通など誤診をまねくリスクも増えるだろう。ポジティブに診察すると、医師として得られるものが増え、君を高めてくれるよ」。自分の心持ちひとつで得られるものが増える、患者さんの信頼を得て、自身のプラスにもなる。心のありようの大切さを学んだ出来事でした。

これは、家族、職場、周りの方々に対しても同じこと。「感謝」の心持ちで毎日を過ごすことで相手との信頼関係が構築され、ひいては自身の人間性も高められる。「パッチ・アダムス」の人間から医師になるというフレーズは、免許をとったからその日から医師になるのではなく、まずは人間として自身はどうあるべきかが医師としてのその後の方向性を決めていくということを、私に教えてくれたのではないかと思っています。

相田みつをの「一生青春一生勉強」という作品があります。まだ人間としても半人前です。研修医生の心持ちで生涯をかけて私自身が思い描く医師に近づくことができるように、ただいま勉強中です。

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