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教授職:誰も就きたくないポスト?[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.58

細川 亙 (大阪大学大学院医学系研究科形成外科学講座教授)

登録日: 2018-01-04

最終更新日: 2017-12-21

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この3月に18年余り務めた教授職を退く予定である。形成外科学教室ができる以前から形成外科医として大阪大学医学部に勤務し始めたので勤続24年ほどであるが、実は阪大を卒業した頃には大学人として生きるつもりはまったくなく、卒業翌年から15年間ほどは阪大と無関係に、ほとんどの期間を市中病院で過ごした。ひょんなことから40歳前に阪大に戻り、45歳から教授職を務めることになった。教授職とは教育者、臨床家、研究者、人材派遣業者、組織運営者などという様々な面を併せ持つ職業である。この職を十分に堪能し、また役目は果たせたと思うので、停年まで少しあるが、辞することにした。

私は停年まで2年を残して退任するが、2~3年前であったか、自治医科大学形成外科学教室の50歳代前半の主任教授が、なんと停年まで10年以上を残して退任し、個人クリニックを開業した。収入面の問題もあったであろうし、臨床家として残りの人生を送りたかったのかもしれない。教授になってはみたものの……というところであろうか。私にも年収3倍でリクルートの話がきたこともある。大学教授の経済的処遇は医師資格所有者の中ではほぼ最低の部類であろう。もちろん、経済的には不遇でも、この職を楽しむか、あるいは使命感に燃えていればよいのだろうが、最近では教授職をめざす人がかなり減少してきているように思われる。このような傾向がさらに強まっていくと、医学部教授というポストがどんどん落ち込んでいくのではないか、と危惧する。崇高な志を持った人がなればよい、というような聖職者待望論では決して事態は好転しない。

自分自身は必ずしも大学人を望んでいたわけではなかったが、教授職というものは多くの志願者の中から選りすぐられた人がなるようなポストであってほしいものである。

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