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(3)脳卒中後痙縮に対する リハビリテーション [特集:脳卒中リハビリの今]

No.4763 (2015年08月08日発行) P.32

藤原俊之 (東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2021-01-05

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  • 痙縮とは上位運動ニューロン病変による「腱反射の増加を伴う速度依存性の伸張反射の増加」または「間欠的または持続する不随意な筋活動をきたす感覚―運動制御の障害」である

    臨床的には相反性抑制の低下ならびにstiffnessの増加が特徴である

    痙縮治療の目的は痙縮による痛み,関節可動域(ROM),運動機能の改善である

    局所的な痙縮の改善にはボツリヌス治療とフェノールによるブロック治療が有効

    HANDS療法は脳可塑性のみならず脊髄可塑性を誘導し,長期的な痙縮の改善に効果がある

    近年ロボット治療の運動機能改善,痙縮軽減の効果が報告されている

    1. 痙縮の神経生理学的機序

    歴史的にみるとLanceら1)の定義によれば,痙縮とは「腱反射の増加を伴う速度依存性の伸張反射の増加」であり,上位運動ニューロンの障害によって生じる1つの症状であるとされてきた。しかし,近年の研究に基づきPandyanら2)は「上位運動ニューロン病変により,間欠的または持続する不随意な筋活動をきたす感覚─運動制御の障害」と定義している。
    神経生理学的には,痙縮筋の伸張に伴い,Ⅰ・Ⅱ求心性線維が興奮し,単シナプス性または多シナプス性に前角細胞の興奮が増加する。それによりα運動ニューロンが発火し,伸張反射の亢進ならびに間欠的・持続的な不随意な筋活動が生じる。Ⅰaの興奮性に関しては,筋紡錘におけるγ運動ニューロンの活動により制御されている。
    臨床的に問題となる痙縮は,主動筋の筋活動に伴う間欠的・持続的に生じる拮抗筋の不随意な活動である。
    通常の単関節運動の場合,主動筋の収縮に伴い,Ⅰaからの求心性インパルスが発射され,脊髄に入り,脊髄レベルでシナプスを乗り換えて,拮抗筋を支配するα運動ニューロンに対して抑制に働く。これが相反性抑制(reciprocal inhibition:RI)である(図1)。
    このRIがうまく効いていない状態が,我々が普段臨床で経験する拮抗筋の同時収縮である(図2a)。この場合,RIが改善されると,拮抗筋の筋収縮が減少し,関節運動が改善する。さらに拮抗筋の筋活動による主動筋への抑制が取れるため,主動筋の筋活動も増加し,機能的な改善を認める(図2b)。
    臨床的な痙縮の評価として用いられるModified Ashworth Scale(MAS)は他動運動時の抵抗を痙縮として評価している。つまりMASで評価している痙縮にはいわゆるstiffness(こわばり)の影響もあり,臨床的に痙縮を考える場合にはRI,stiffnessに対しても考慮が必要である。



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