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命ある限り希望がある[エッセイ]

No.4860 (2017年06月17日発行) P.70

豊泉 清 (豊泉クリニック)

登録日: 2017-06-18

最終更新日: 2017-06-13

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  • 私はイタリアオペラに興味があり、歌詞の内容を理解したくて、辞書や参考書を繙きながら独学でイタリア語の初歩の初歩を細々と囓っている。では、辞書で目にして雑記帳に書き留めておいたイタリア語の格言の中からいくつか披露してみたい。

    Il buon vino non vuole frasca.
    「良いブドウ酒に看板は要らない」

    美味しいという評判が広まれば、わざわざ宣伝しなくても大勢の人が遠くから買いにくる。漢文の「桃李不言 下自成蹊」と同じ発想である。

    Lontano dagli occhi, lontano dal cuore.
    「目から遠い、心から遠い」

    直訳から「去る者日々に疎し」と同じだな、と即座に見当がつく。

    Le bugie hanno le gambe corte.
    「嘘は短い脚を持っている」

    短い脚は、走るのが遅くて逃げても直ぐ捕まるという譬えで、嘘は必ず露見するという意味になる。

    Le cattive notizie hanno le ali.
    「悪い噂には翼がある」

    翼は、瞬く間に遠くまで飛んでいくという譬えだから「悪事千里を走る」に相当する。ちなみに、中国語は「好事不出門、悪事伝千里」(良い行為は世間に知られない。悪事は瞬時に千里伝わる)のように、好事と悪事を一対にして表現している。

    Il diavolo fa le pentole ma non i coperchi.
    「悪魔は鍋を作るが蓋は作らない」

    蓋のない鍋で料理をつくると、匂いがあたり近所に漂って、どんな料理をつくっているかすぐ知れ渡ってしまう。悪事はどんなに秘しても必ず露見するという意味で使われる。

    Cane affamato non teme bastone.
    「飢えた犬は棒を恐れない」

    腹ペコの犬の目の前に美味しい餌があり、その傍らに棒を持っている人が立っていると、犬は棒で殴られるのを承知で餌に飛びかかる。棒で殴られる痛さより、空腹のほうが辛い。辞書には「背に腹は代えられぬ」という解説が載っている。イタリアにも犬と棒が同時に登場する格言がある。

    A parole tutti sono eroi.
    「話だけなら誰でも英雄」

    俺が、俺が……という自慢話を聞いていると、みな英雄や偉人のように思えるが、実は能無しの凡人である。イタリア人は自慢話が好きな民族なのだろうか。

    Non tutti i mali vengono per nuocere.
    「すべての禍が不幸をもたらすとは限らない」

    つまり、禍でも時には何かの役に立つこともあると解釈できる。辞書では「禍を転じて福となす」と解説している。

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