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心臓マッサージの継続希望に法的拘束力はあるか? 【医療機関側が延命治療の方針を決めて周知する】

No.4849 (2017年04月01日発行) P.67

登録日: 2017-03-29

最終更新日: 2017-03-28

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  • 患者の家族の中には患者ががん末期などで亡くなる際に,心臓マッサージ,人工呼吸器などの延命処置を希望する人がいます。また,明らかに死亡しているにもかかわらず家族の誰かが来院するまで心臓マッサージの継続を希望する家族がいます。このような家族の希望にはどれだけの法的拘束力があるのでしょうか。拒否した場合,法的な問題がありますか。

    (質問者:長野県 K)


    【回答】

    終末期医療の方針は,本来患者自身の意思を基軸に適切に決定されるべきものです。しかし,実際の医療の現場においては,ご質問のように,患者の意識が清明でなくなった後に,患者の家族から延命処置等の終末期医療の方針への希望が表明されることが少なくない状況にあります。

    2007年に厚生労働省が策定した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は,方針決定のプロセスを考える上で参考になるものです。また,いわゆる東海大学安楽死事件,川崎協同病院事件の2つの刑事裁判における判決内容も参考になります。こうしたものを前提に,ご質問について,法的な視点から考えてみます。

    この問題のポイントは,治療義務が限界に達した場合の医師の裁量性が認められるのかという点と,本来患者の一身専属的な権利である自己の最期の生き様に関する意思決定を家族が忖度して決定できるかという点にあります。もはや治癒すべき治療方法がなくなり,延命処置しかなくなり,患者本人が意識清明の段階で事前に延命処置拒否を文書等で明確に示しており,その意思が継続していることが認められるような場合には,延命処置を行わなかったとしても,法的には何ら問題にならない,というのが現在の大方の法曹および法律学者の考え方と思われます。

    しかし,ご質問は,治療義務の限界に達したことが認められた場合に,患者本人の意思が不明で,家族の意思のみが存在している場合に関することです。法律上は,親族という概念・定義は民法に定められていますが,家族の範囲に関して明確に規定した法律はありません。したがって,この場合の「家族」が誰を指すのかが,まず問題になります。

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