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【識者の眼】「『ゲノム医療法』成立と今後の課題」天野慎介

No.5175 (2023年07月01日発行) P.52

天野慎介 (一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)

登録日: 2023-06-15

最終更新日: 2023-06-15

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与野党の超党派議連による「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」(ゲノム医療法)は、さる6月9日の参議院本会議で可決、成立した。法案成立に尽力いただいた超党派議連をはじめ、法案に関わった多くの皆様に心より感謝申し上げたい。

ゲノム医療法は、2014年に超党派の国会議員による「遺伝医療・ビジネスを取りまく諸課題を考える勉強会」で検討が始まり、16年には超党派「適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟」となった。この間、全国がん患者団体連合会やゲノム医療当事者団体連合会などの患者団体は法律の早期成立を求める要望活動を行い、18年には全国がん患者団体連合会と日本難病疾病団体協議会が共同で、当時の大口善徳厚生労働副大臣に法律の早期成立を求める要望書を手交した。

2022年4月には、日本医学会と日本医師会から「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」についての共同声明が公表され、同年11月には、東京大学医科学研究所の武藤香織教授の取りまとめにより、学会や医療関係団体、患者団体合わせて185団体(のちに254団体)の賛同を得て、法律成立を求める要望書が国会議員に提出された。

ゲノム医療法では、ゲノム医療の研究開発と提供の推進、生命倫理や情報の取り扱いに関する指針の策定、相談支援体制の整備や不当な差別への適切な対応などを定めるとともに、政府が基本計画を策定することとしている。一方で、国会の厚生労働委員会での質疑や、れいわ新選組から提出された修正案審議の過程では、差別防止の実効性を担保することについて、現状では各省庁による対応が不十分である点も明らかとなった。

NHKと朝日新聞による報道では、リンチ症候群と診断された30歳代男性の大腸がん患者について、保険会社から千葉県がんセンターに遺伝子検査の結果や家族歴の照会があった事例が紹介されており、患者団体にも同様の相談が寄せられている。生命保険協会では昨年、遺伝学的検査結果の収集や利用は行っていないとする文書を公開している。

2008年に成立した米国の遺伝情報差別禁止法(GINA法)では、遺伝情報に基づく保険加入制限や保険料等の調整の原則禁止、事業者による遺伝情報取得の原則禁止など、保険分野と雇用分野での対応を定めている。厚生労働省をはじめ、内閣府、経済産業省、文部科学省、金融庁や法務省など、各省庁が連携した対応が求められている。

天野慎介(一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)[遺伝情報][差別禁止]

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