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COPDと喘息のオーバーラップ症候群 [内科懇話会]

No.4844 (2017年02月25日発行) P.40

司会: 弦間昭彦 (日本医科大学学長)

演者: 巽 浩一郎 (千葉大学呼吸器内科学教授)

登録日: 2017-02-24

最終更新日: 2017-02-22

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  • 【司会】弦間昭彦(日本医科大学学長)
    【演者】巽 浩一郎(千葉大学呼吸器内科学教授)

    COPD,喘息いずれの悪化にも,喫煙は関係する

    COPDでは,加齢により肺から空気を押し出す力が弱くなり,加齢に伴い呼吸機能が低下する

    喘息の本態は中枢気道~末梢気道に至る,気道炎症である

    COPDと喘息が合併した喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の治療は,国際ガイドラインによると,「喘息が基本にあってCOPDの病態もある場合は,喘息の病態を考えて吸入ステロイドを使用すること」を推奨している

    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)と喘息は,ともに呼吸器内科領域でcommon diseaseとして知られています。COPDは日本人の40歳以上の8~9%,12人に1人くらいの有病率であることがわかっています。一方,喘息は小児から老人まで,国内の人口の4%程度がその素因を持っていて,何らかの症状を呈すると言われています。

    COPDは,肺胞構造が壊れる,すなわち肺気腫ですが,正常なブドウの房状の肺胞が壊れて気腔の拡大が肺胞領域に起こるのが1つの特徴です。もう1つは,太い気道に炎症が起きて分泌物が増え,咳や痰が増えます。

    炎症からみたCOPDの病態

    呼吸器は太い気道から肺胞領域までつながっていますので,たばこや有毒な粒子など何らかの有害物質を吸引すると,領域を問わず炎症が起きます。炎症という点で考えると,肺胞領域に炎症が起きても咳・痰という症状にはつながりません。慢性気管支炎で咳・痰が出るのは,あくまでも太い気道に炎症が起きた結果になります。一方,肺の構造が壊れる肺気腫の病態は,肺胞構造の炎症の結果であると言えます。

    COPDで問題になるのは息切れ,すなわち空気の出入りが非常に悪くなるため,動くと苦しくなるという症状です。その病気の主座は,細い気道と肺胞領域の炎症で,肺胞構造が壊れたことによります。これが気流制限,すなわち非常に息を出しにくくなるという症状につながります(図1)。主に肺胞構造が壊れる病型は気腫型と呼ばれ,末梢気道の炎症が主に起きる病型は非気腫型と考えられています。


    加齢に伴う呼吸機能低下とCOPD

    加齢により,肺胞構造においては肺胞道が拡張し,さらに肺から空気を押し出す力が弱くなるため,すべての人で呼吸機能が低下します。

    たとえば,75歳で1秒量が2Lの場合は自覚症状はほとんど出ません。しかし,これが1.2Lぐらいになると,症状が出てきます。ほとんどの人は加齢に伴って呼吸機能は低下しますが,自覚症状が出ることはなく一生を過ごします。加齢以上に呼吸機能が低下して,さらに肺胞構造の破壊などが進んでしまうケースが,COPDになります。COPDは人によって進行具合が大きく違うということがわかっています。

    日本人のCOPDの7~8割は息を吐きづらいことがあっても,一生涯ほとんど困らないと想定されています。残りの2割くらいの人が加齢とともに強く呼吸機能が低下し,自覚症状が出ることになります。

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