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クループ症候群[私の治療]

No.5210 (2024年03月02日発行) P.43

野沢永貴 (東京大学医学部附属病院小児科)

登録日: 2024-03-05

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  • クループ症候群は,吸気性喘鳴,咳,嗄声などの呼吸器症状を主病態とする疾患群の総称であり,オットセイの鳴き声や犬が吠える声にたとえられる咳(犬吠様咳嗽)が特徴的である。生後6カ月~3歳に発症のピークを持ち,6歳以下の年齢層に好発する。6歳を超える小児での発症は稀である。主に喉頭および声門下気道の炎症に起因し,パラインフルエンザウイルスをはじめとするウイルス感染症が原因の大多数を占めるが,時に細菌性気管炎を発症している場合がある。また,アレルギー素因を有する小児が環境中のアレルゲンに曝露されることで炎症が惹起されることもあり,痙性クループと呼ばれる。夜間に突然発症することが多い一方で,症状改善も速やかで,医療機関を受診するまでに軽快してしまうことが多い。

    ▶診断のポイント

    クループ症候群は,喘鳴と特徴的な犬吠様咳嗽をもとに臨床的に診断するため,X線画像や血液検査等の臨床検査は原則不要である。ただし,経過や全身症状などにより臨床診断に疑問がある場合は,必要な臨床検査を適宜追加してもよい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    クループ症候群の小児のほとんどは軽症で自然軽快が望めるため,外来診療の範囲で管理が可能である。ただし,帰宅させた場合でも24時間以内に医療機関での再評価が必要である。中等度~重度の症状のある症例によっては,十分な評価と入院での経過観察や治療が必要となる場合がある。

    クループ症候群は,喉頭あるいは声門下気道が炎症により腫脹し狭窄しており,啼泣に伴い速い気流が発生した際に狭窄部に陰圧がかかり,気道内腔の狭窄を悪化させる可能性がある。小児は,医療従事者の診察や処置に限らず,モニターの装着や医療従事者の姿を確認するだけでも啼泣してしまうことがしばしばあるため,保護者にも協力を依頼し,できる限り安心感を与え,安静呼吸を維持できる環境を整えることが重要である。症例によっては,診察や処置時にも保護者に児を抱いてあやしてもらうことなどを考慮する。

    治療方針の立案には,クループ重症度スコアによる重症度判定が役に立つ。Westleyのクループスコアは,最もよく使用されている重症度スコアであり,意識レベル(睡眠を含めて正常:0点,意識障害あり:5点),チアノーゼ(なし:0点,興奮時のみ:4点,安静時も出現:5点),吸気性喘鳴(なし:0点,興奮時のみ:1点,安静時も出現:2点),呼吸音(正常:0点,減弱:1点,顕著に減弱:2点),陥没呼吸(正常:0点,軽度:1点,中等度:2点,高度:3点)の各項目の合計点数で重症度を分類する。2点以下を軽症,3~7点を中等症,8点以上を重症と判定する。治療に関しては,室内気の加温,加湿に加えて上述した重症度に応じてステロイドの投与やネブライザーによる吸入療法が選択される。

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