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鳥インフルエンザの動向

No.4752 (2015年05月23日発行) P.47

藤田次郎 (琉球大学感染症・呼吸器・消化器内科 (第一内科)教授)

登録日: 2015-05-23

最終更新日: 2016-10-26

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鳥インフルエンザのヒトでの発症が認められたものとして,H6N1が台湾で,H5N1が中国(湖南省,広西チワン族自治区)およびカナダ(アルバータ州,北京に3週滞在)で,H7N9が中国各地,台湾およびマレーシアで,H9N2が中国(湖南省,広東省,香港)で,およびH10N8が中国(江西省)で報告されている。また家禽に発症したものとして,H5N2が中国(河北省,山東省)で,またH5N8が韓国(京畿道,忠清南道,全羅北道,全羅南道)および日本(東京)で報告されている。
最も注目されているのがH7N9の動向である。2013年3月,上海および安徽省で重症肺炎・肺障害の患者が入院し死亡した例が発生した。これまで,鳥類間でのみ感染していた鳥インフルエンザ(H7N9)ウイルスの初のヒト感染例であることが確認され,その後,中国国内での感染患者は増加の一途をたどった。鳥インフルエンザH7N9感染の初発症状は,急激な発熱,筋肉痛,関節痛など通常のインフルエンザと類似する。ただし,重症肺炎への進行の頻度が高い。鳥インフルエンザH7N9を疑う項目として,(1)38℃以上の発熱と急性呼吸器症状,(2)臨床的または放射線学的に肺病変が疑われる,(3)発症前10日以内の中国への渡航または居住歴,(4)他の感染症または他の病因が明らかでない,などがある。
行政的措置として,2013年5月6日に「指定感染症」および「検疫感染症」に定められた。治療としては,早期の抗インフルエンザウイルス薬の投与で,重症化の懸念がある場合は倍量10日間投与が推奨されている(WHO,米国CDC,日本感染症学会)。

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