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イーライリリー最高科学・医学責任者が記者会見:アルツハイマー病疾患修飾薬「ドナネマブ」申請、「レカネマブ」に対するアドバンテージは?【Breakthrough 医薬品研究開発の舞台裏】

No.5192 (2023年10月28日発行) P.14

登録日: 2023-10-24

最終更新日: 2023-10-24

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米製薬大手イーライリリー(イーライリリー・アンド・カンパニー)の最高科学・医学責任者ダニエル・スコブロンスキー氏が10月10日、都内で記者会見を開き、米国・日本での承認申請手続きを完了させたアルツハイマー病(AD)疾患修飾薬「ドナネマブ」の臨床試験結果について解説した。すでに米国・日本での承認を取得しているエーザイの「レカネマブ」(商品名:レケンビ)に対し、ドナネマブはどのようなアドバンテージを持っているのか。

イーライリリーが開発したAD疾患修飾薬ドナネマブは、レカネマブと同じ抗アミロイドβ抗体。レカネマブが脳内に蓄積した凝集アミロイドβプラークの前駆物質である可溶性アミロイドβ凝集体(プロトフィブリル)を標的としているのに対し、ドナネマブは、アミロイドプラーク自体を標的としている。

日本イーライリリー(イーライリリーの日本法人)は9月26日、「ADによる軽度認知障害(MCI)およびADによる軽度認知症」の適応で日本での承認申請を行ったと発表。米国での承認申請は6月までに完了している。イーライリリーのデイビッド・リックスCEOは9月26日、都内で開かれたフォーラムで、日本での承認時期は「おそらく来年になる」との見通しを示した。

申請の根拠としている臨床試験(TRAILBLAZER-ALZ 2試験)では、参加した早期AD当事者(1736人)を「タウの蓄積量が軽度~中等度の群」と「タウの蓄積量が高度の群」に層別化。「タウの蓄積量が軽度~中等度の群」(1182人)で、ドナネマブ投与によりiADRS(認知機能と日常生活動作を評価する指標)の低下が35%遅延、CDR-SB(認知症の幅広いステージの重症度を評価するスケール)における臨床症状の悪化が36%遅延したことが確認されている。

 

「基準達成すれば治療中止ができる」

10月10日の会見でスコブロンスキー氏は、臨床試験結果のポイントについて解説。AD患者の日常生活機能を評価する「ADCS-iADL」を用いた副次的解析で、投与開始後18カ月時点での日常生活機能の低下がプラセボ群と比較して40%抑制されたことを大きく取り上げ、「これまでにAD治療薬の臨床試験で見られた一番大きな結果だ」とした。

また、ドナネマブ群の試験参加者の約半数(47%)は投与開始後1年(12カ月)の時点でCDR-SBの悪化が認められなかった(プラセボ群は29%)とし、「(1年で)安定性が維持できることが示された」と述べた。

「(レカネマブが先行して承認されている状況の中で)ドナネマブの持つアドバンテージは」との記者の質問に対しては、「ドナネマブはアミロイドプラークそのものにフォーカスを当てており、迅速にかつ深くプラークを除去できる」「プラーク除去の基準を達成できれば、治療を中止することができる」と強調した。

 

「プラークが再沈着すれば治療再開」

「ドナネマブ投与でアミロイドプラークが除去された後、プラークが再沈着するまでにどのくらいかかるか」との質問に対しては、「プラークがまたできるとしても5~10年はかかるだろう。プラークの堆積が起きればまた治療する。ワクチンで初期の接種を何回か行い、数年に何回かずつブースター接種するのと同じような考え方だ」と説明した。

安全性の面で懸念される浮腫や微小出血などのARIA(アミロイド関連画像異常)の出現率がレカネマブに比べて高いことについては、「(ADが)より進行していればプラークは脳内に多くあり、(プラーク除去に伴う)ARIAのリスクも上がる。(実臨床では)ARIAが出れば治療を止めることも含めて慎重に進めていくことになる」と述べた。

抗タウ抗体との併用療法も開発へ

ドナネマブの臨床試験でタウの蓄積量が軽度の試験参加者ほど高い有効性が確認されたことから、イーライリリーはタウを評価する新しい血液バイオマーカーの開発も進めている。スコブロンスキー氏は「ドナネマブをAD治療薬として上市する際にはこの血液検査も使えるようにしたい」と述べた。

ドナネマブなどの抗アミロイドβ抗体に抗タウ抗体を組み合わせれば「より効果は大きくなる」と明言し、併用療法の開発を進めていく考えも示した。

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