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【識者の眼】「音楽療法(士):今後の展開」大野 智

No.5222 (2024年05月25日発行) P.65

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2024-05-10

最終更新日: 2024-05-10

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読者の皆さんは「音楽療法」をご存知だろうか? 一般社団法人日本音楽療法学会は、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」と定義している。

2024年4月12日の衆議院厚生労働委員会において音楽療法が取り上げられた。岬麻紀議員(日本維新の会・教育無償化を実現する会)の質問に対して武見敬三厚生労働大臣、浅沼一成医政局長が回答する動画を確認したところ、個人的に興味深いやり取りがあったので紹介したい。

▶ノルウェー(1992年)、イギリス(1999年)、オーストリア(2008年)では、音楽療法士が国家資格になっている

▶日本では19校の音楽大学・大学院で音楽療法士の育成に取り組んでいる

▶音楽療法士の国家資格化においては、音楽療法の定義・科学的根拠、療法士としての資質や業務の規定、医療や福祉など関連分野の専門職種との関係、業務内容に関する国民からの認知と理解など幅広い観点から検討する必要がある

動画の中で紹介されていたが、米国では国家資格ではないものの音楽療法士は医療者および国民・患者に広く認知されている。たとえば、MDアンダーソンがんセンターでは統合医療センターが設置され音楽療法が提供されている。

音楽療法の科学的根拠については、PubMedで検索すると、ランダム化比較試験は約1300件、システマティックレビューは約700件が報告されている。コクランレビューでも45件が報告されており、うつ病、がん、心筋梗塞などの患者の不安を軽減する、手術前、人工呼吸器装着など医学的介入に伴う不安を軽減するなどの効果が示唆されている。一方で音楽療法の有害事象(副作用)は、ほとんど報告されていない。

筆者個人の経験として音楽との接点は、素晴らしい演奏を聴いて感動する、カラオケで熱唱しスッキリする、などしかない。しかし、海外の情勢、科学的根拠の蓄積などをふまえると、医療や介護の現場で音楽療法を利活用できる場面は少なくないものと思われる。そのためにも、音楽療法士の国家資格化に向けた幅広い議論が今後求められてくるものと考える。

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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