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【識者の眼】「障害者差別解消法における合理的配慮にどう取り組むか」藤原清香

No.5216 (2024年04月13日発行) P.56

藤原清香 (東京大学医学部附属病院リハビリテーション科准教授)

登録日: 2024-03-25

最終更新日: 2024-03-25

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障害者差別解消法ではこれまで、民間の事業者には、障害のある人への合理的配慮の提供が「努力義務」とされてきました。しかし2021年5月に法改正が行われ、24年4月1日からすべての事業者において合理的配慮の提供が「義務」となります。

障害児や障害者に関わることで、診療だけではわからないことがみえてくることがあります。障害のある人への合理的配慮については、たとえば就学や就労の場面で、社会の理解がなかなか進んでいないことを感じています。

公立学校では近年、特別支援学級を設置するなど、障害のある子どもたちに適切に対応できるように取り組みが進んでいます。地域によって差はあるものの、少しずつ変化があるように思います。私立学校では、宗教的な背景などから障害のある子どもの受け入れ姿勢や体制も整っている学校がある一方で、学校によっては均質な生徒だけを受け入れるほうが負担が少ないと思われるのか、受け入れに難色を示すところもあるようです。学校説明会でも、障害のある子どもの親が障害に対する配慮などについて質問しても、暗に受け入れが困難なことをほのめかし、受験しないように仕向けることがあるといいます。

「障害」と一口に言っても、たとえば身体障害者手帳の交付対象である身体障害には、「視覚障害」「聴覚又は平衡機能の障害」「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」「肢体不自由」「内蔵の機能障害」などがあります。それぞれの障害には特徴があり、さらに個人によって障害の重症度も異なるために、実際に必要とする合理的配慮は個別性が高いものになります。

先述の、学校から暗に入学を断られたお子さんは、片手に障害があるため、両手で教科書を持って立って朗読することはやりにくいでしょうし、体育で縄跳びがしにくいなど一部の作業やカリキュラムはやりにくいと思われます。しかし、それほど学校側に負担になるとも思えず、他の健常と言われる子どもたちと同じように学べるはずと医療者としては考えています。

また、日本では低身長は障害ではないとされていますが、規定以上の低身長の人たちはパラリンピックに参加できる資格があります。低身長の人は実際に社会の中では自販機のボタンが高いところにあって届かないことがあり、レストランなどで椅子が高ければ座席につくのも苦労しますし、階段の段差が大きいと昇降に苦労するといった障壁があり、これらに対する合理的配慮が必要と言えます。 しかしこれも低身長の度合いにもよりますし、必要とする配慮の内容は一律ではありません。

法律で定められたため、合理的配慮をすべきとは思いますが、事業者側にどれだけの負担が生じるのかは状況によって様々です。合理的な配慮が過剰な負担であれば、小さな民間事業者などは対応できないのは当然です。個別性の高い障害による課題や障壁について、もしその対応を相談された場合は、まずは障害がどのようなものかを正しく理解する努力から始め、実際に向き合った一人としてどう解決するかという、ささやかな取り組みから始めると良いのではないでしょうか。 その上で、解決できればそれは素晴らしいことですし、解決できなかった場合には、配慮を要求した個人や対応できなかった個別事業者を責めるのではなく、それがどのような事例なのかをきちんと蓄積し、将来的にどのように対応するべきなのかという解決策を社会全体で考えていく必要があると考えます。

藤原清香(東京大学医学部附属病院リハビリテーション科准教授)[障害を適切に理解する][社会的障壁]

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