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汎下垂体機能低下症[私の治療]

No.5204 (2024年01月20日発行) P.34

岩間信太郎 (名古屋大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科講師)

有馬 寛 (名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学教授)

登録日: 2024-01-18

最終更新日: 2024-01-16

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  • 下垂体から分泌されるホルモンには,下垂体前葉ホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),ゴナドトロピン(LH,FSH),成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL)と,後葉ホルモンであるバソプレシン(AVP),オキシトシンがある。汎下垂体機能低下症は,すべての下垂体前葉および後葉ホルモンの分泌低下を伴う疾患と定義される。
    下垂体機能低下症が生じる病因として,下垂体自体の障害,視床下部の障害,および両者を連結する下垂体茎部の障害が考えられ,障害部位が複数の領域にまたがっていることも多い。原因として,視床下部下垂体領域の器質的疾患〔腫瘍(下垂体腫瘍,頭蓋咽頭腫,胚細胞腫瘍など),炎症性疾患(肉芽腫性疾患としてサルコイドーシス,IgG4関連疾患など,自己免疫性炎症性疾患としてリンパ球性下垂体炎など),外傷・手術〕によるものが最も多い。シーハン症候群(分娩時大出血に伴う下垂体梗塞)の頻度は低下している。下垂体ホルモン単独欠損症はGHやACTHに多く,前者では出産時の児のトラブル(骨盤位分娩など)が,後者では自己免疫機序の関与が示唆されている。稀に遺伝子変異に起因する例があり,カルマン(Kallmann)症候群の原因遺伝子であるANOS1(KAL1)の変異はLH,FSH欠損による先天性性腺機能低下症の原因となる。また,頭部外傷,くも膜下出血後,小児がん経験者においても下垂体機能低下症を認めることがあり注意を要する1)

    ▶診断のポイント

    1つの下垂体ホルモンが種々の病態に関係しているため,1つのホルモンの欠損により複数の症状が出る。また,特異的な症状が少ないため,表に記した症状が認められた場合には下垂体機能低下症を疑って,ホルモンを測定することが重要である。

    疑った場合はホルモンの基礎値を測定するが,測定する時間および採血条件が結果に影響することに留意する。ホルモンの基礎値を測定する場合,早朝空腹かつ安静時という条件が求められる。しかしながら,早期に診断する必要がある場合などにおいては随時の測定を行い,専門医へのコンサルトを考慮するのが望ましい。確定診断には各種負荷試験を施行する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    基礎疾患に対する治療:原因となっている腫瘍性ないし炎症性疾患が存在する場合は,各々の疾患に対して手術などの治療法を選択する。

    ホルモン欠乏に対する治療:下垂体機能低下症に対しては,欠乏するホルモンの種類や程度に応じたホルモン補充療法を行う。

    残り1,363文字あります

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