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甲状腺クリーゼ[私の治療]

No.5211 (2024年03月09日発行) P.40

安田重光 (埼玉医科大学内分泌内科・糖尿病内科講師)

登録日: 2024-03-07

最終更新日: 2024-03-05

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  • 甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン過剰状態)に強い侵襲が加わり,生体の代償機構の破綻から多臓器不全に陥る,重篤な病態。
    2012年に報告されたわが国の全国疫学調査では,致死率は10%以上である。原疾患ではバセドウ病が最多(他の甲状腺中毒症でも発症例あり)であり,抗甲状腺薬の不規則な服用,感染等の侵襲が誘因となる。

    ▶診断のポイント

    日本甲状腺学会・日本内分泌学会の「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017」を参照のこと。

    【症状】

    重度の甲状腺中毒症の症状と意識障害が特徴である。

    ①中枢神経症状:JCS(Japan Coma Scale)1以上またはGCS(Glasgow Coma Scale)14以下。不穏,痙攣,昏睡など
    ②発熱:38℃以上
    ③頻脈:130回/分以上。心房細動併発例もあり
    ④心不全:肺水腫,肺野の50%以上の湿性ラ音聴取,心原性ショックなど。NYHA(New York Heart Association)分類Ⅳ度またはKillip分類クラスⅢ以上
    ⑤消化器症状:嘔気,嘔吐,下痢,黄疸

    【血液検査所見】

    FT3,FT4の両方またはどちらかの高値。FT3正常値の重症例もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    一般的緊急処置,十分な輸液と電解質補正,身体冷却などの全身管理,併発症〔感染症,播種性血管内凝固症候群(DIC)など〕も含め集学的治療を行う。DIC,多臓器不全,ショックを併発し,APACHE Ⅱスコアが9以上ならば集中治療室で管理する。

    原疾患がバセドウ病ならば,抗甲状腺薬と無機ヨウ素を大量投与する。

    相対的副腎不全の病態も伴うため,初期から副腎皮質ステロイドを投与する。

    頻脈にはβ1選択性のβ遮断薬,心房細動合併でジギタリスを使用,重症例は人工心肺や血漿交換も考慮する。

    発熱対策としてアイスパック等で全身を冷却し,アセトアミノフェンを投与,中枢神経症状に鎮静薬や抗痙攣薬を使用する。

    【治療上の一般的注意】

    本疾患は放置すれば死に至るため,早期に治療を開始する。

    β遮断薬使用時は心不全に注意し,気管支喘息患者にはベラパミルやジルチアゼムを使用する。

    高齢者では症状に乏しいこともあり,注意が必要である。

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