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【識者の眼】「ノーベル週間ご報告」渡部麻衣子

No.5201 (2023年12月30日発行) P.56

渡部麻衣子 (自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)

登録日: 2023-12-19

最終更新日: 2023-12-19

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ここストックホルムでは、毎年12月第2週はノーベル賞をお祝いするノーベル週間で、祝賀晩餐会が開催される市庁舎がライトアップされるなど、このコラムを書いているまさに今、街はお祝いムードに包まれています。スウェーデンの伝統的な聖日、聖ルチアの日(12月13日)を前に、クリスマスマーケットの立つ時期とも重なり、歴代ノーベル賞受賞者を紹介するノーベル博物館の前の広場は、さながら日本の夏祭りのように賑わいます。

また、授賞式の数日前に開催される受賞記念講演は、事前に席がなくなってしまわなければ、先着順で誰でも聞くことができるため、講演によっては2時間並ぶ人もいると聞きます。私は、幸運にも、ストックホルム大学で開催されたクラウディア・ゴールディン教授の経済学賞受賞記念講演を直接聞くことができました。教授は自身の研究から明らかになったこととして、「男女のカップルが家庭内で労働を平等に分担することが、社会における男女の平等な労働の分担につながる」と述べて、講演を結ばれました。まずは家庭からというこの言葉は、家事労働時間の男女差がOECD加盟国の中でとりわけ大きい日本で、より噛み締められるべきかと思います。

さて、授賞式本番や祝賀晩餐会は、ネットでライブストリーミングされるので、家に帰ってからもお祝いムードは続きます。はじめ、晩餐会のライブストリーミングと聞いてもうまくイメージが湧きませんでしたが、実際観てみると、生演奏やメニュー紹介、受賞者の経歴を紹介する短いドキュメンタリーなどが合間に挟まれ、まったく飽きることがありません。何より、学術的功績をお祝いする晩餐会の盛大さに、学術活動にたずさわる者として胸が熱くなりました。

今年は、ゴールディン教授が、男女間の賃金格差の原因を追求する研究で、女性として初めて経済学賞を受賞された他、イランで女性の権利を擁護する活動を続け、現在も収監中のナルゲス・モハマディ氏に平和賞が授与されるなど、「女性の権利」によりいっそう光が当てられる年だったのではないかと思います。この光をより良い形で繋いでいくために微力な私にできることは何か、と今、問われているような気持ちです。

渡部麻衣子(自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)[女性の権利]

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