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【識者の眼】「国際科学技術社会論学会(4S)年次大会に参加しました」渡部麻衣子

No.5198 (2023年12月09日発行) P.62

渡部麻衣子 (自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)

登録日: 2023-11-30

最終更新日: 2023-11-30

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新型コロナウイルスの感染拡大が個人的生活にもたらした劇的な変化の1つに、種々の会合へのオンライン参加が可能となったということがあります。中でも国際学会へのオンライン参加が可能となったことは、参加のしやすさを格段に高めました。11月初めには、私のメインの学会である国際科学技術社会論学会(Society for Social Studies of Science:4S)の年次大会にオンラインで参加し、無事発表をすませることができました。今年の開催地はハワイ。もちろん行きたいのはやまやまでしたが、身体的限界から、現地参加は難しいとの判断に至りました。

今年は科学技術社会論(Science, Technology and Society:STS)学会の領域にFemTechの波が来ていたようで、関連セッションが3つも立っていました。STSにおいて、女性の身体に関連する技術であるFemTechの分析は、フェミニズム科学論と呼ばれる領域を基礎として展開されることが多いのですが、この領域の先端の動きを知ることができたのは大きな収穫でした。

フェミニズム科学論は、自然科学や医科学の領域に女性が少ないことを問題視するだけでなく、科学が歴史的に男性によって実践されてきたために、用いられる言葉やメタファーが男性の視点に立っていることを指摘し、そのような性別による視点の偏りが、時に科学の発展の方向性を歪めてきたことを明らかにしてきました。最近では、医科学において女性の身体経験がいかに顧みられてこなかったかを指摘する著書も、いくつか発表されています。

月経周期管理アプリに代表されるFemTechは、女性自身の生活に役立つだけでなく、女性の身体経験を集積し研究に還元することで、医科学の知識にある、そうしたジェンダー構造に基づく視座の偏りを是正すると期待する論者もいます。つまりFemTechは、ジェンダード・イノベーションの道具になりえると考えているのです。一方で、FemTechは女性の身体を営利目的で利用していると批判する論者もいます。

国際学会の場で各国の論者の発表を聞きながらとりわけ興味深く感じられたのは、しかし、女性を取り巻く社会環境や価値観が大きく変動する、先進国に共通する状況の中で、女性たちがアプリ等の技術を用いて、月経のある身体を社会に適合させようとしている姿です。オンライン参加を可能とする技術に、身体の限界を補助してもらっている立場から、発表を聞いていたからかもしれません。どのような技術が、月経のある身体を持つ人の社会生活を真に助けるのか。考察を深めていきたいと思います。

渡部麻衣子(自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)[FemTech][身体の社会適合]

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