先天的な障害や病気・事故などによって,肛門からの便の排泄,尿道からの尿の排泄が困難となった場合,手術で腹部につくった排泄口から便や尿を排出する。このような排泄口を,人工肛門・人工膀胱と言うが,両者を総称してストーマと呼ぶ。オストメイト(人工肛門・人工膀胱の保有者)は,「人工」という言葉の響きを好ましく感じないようで,「ストーマ」と呼ぶ人が多い。
ストーマには排泄を調節する筋肉がないので,排泄を我慢するなどの調節はできない。したがって,基本的にはストーマからの排泄物を受けるストーマ袋を腹部に貼りつけておく必要がある。このような一連の道具が,ストーマ装具である。
便や尿を漏らさず袋にためることと,袋を貼りつける皮膚に障害を起こさないことが,ストーマケアのポイントである。
人工肛門(消化管ストーマ)と人工膀胱(尿路ストーマ)の構造と注意点について解説する。消化管ストーマは,小腸ストーマと大腸ストーマに分類される。小腸ストーマからは水様便が頻回に排出される。排液はアルカリ性で消化酵素を含むため,便が漏れて皮膚に付着する時間が長くなると,皮膚が消化されて潰瘍を形成する。排液はほとんど臭わない。
同じ消化管ストーマでも大腸につくられる大腸ストーマは,便からの水分が吸収され,軟便〜固形便のことが多い。消化酵素の働きは低下していて,皮膚障害が起こりにくい。しかし,便臭が強くなるため,便漏れがあると周囲に悪臭が漂う。大腸ストーマでは,便の出る時期が一定の患者もいて,便をためる袋を外したり,使い捨ての袋で管理するなど自己流の管理になっていることも多い。大腸ストーマでも右側大腸につくられると,小腸ストーマに近い管理が必要になる。
尿路ストーマでは,絶えず尿が排出される。食べ物によっては尿臭が強くなる場合も多い。臭いはもちろんだが,漏れると衣服が濡れるため尿漏れに敏感になり,外出を控える患者がいる。
消化管ストーマでも尿路ストーマでも,排泄物の漏れによって皮膚障害が起こると,排泄物をためる袋が皮膚に固着しにくくなり,さらなる漏れを起こす悪循環に陥る。
まず,ストーマが消化管ストーマなのか尿路ストーマなのか,また消化管ストーマなら小腸ストーマなのか大腸ストーマなのかをアセスメントする。小腸ストーマや尿路ストーマでは,排泄物が水様であることから,ストーマ装具が適切に選択され,装着が確実に行われていないと,排泄物の漏れが起こる。頻回に漏れが起こり,あるいは皮膚障害があってストーマ周囲皮膚にかゆみや痛みがないかをしっかりと聞き取る。大腸ストーマでは便漏れによる臭気に注意する。これらへの対応は専門的な知識と技術が必要である。ストーマケアの専門家は皮膚・排泄ケア認定看護師であり,ストーマ講習会を受講した看護師も準専門家である。
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