中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会は7月12日、医薬品や医療機器を対象にした費用対効果評価制度について、費用対効果評価専門組織が提示した見直し案を大筋で了承した。価格調整の対象範囲については、支払・診療側の双方から拡大するよう見直しを求める意見が相次いだ。
費用対効果評価制度は2019年4月から運用が始まったもので、保険収載された医薬品・医療機器のうち市場規模が大きい、または単価が著しく高い品目を対象に、既存の対照品目と比較して費用、効果がどれだけ増加するかを分析し、その結果を踏まえて価格を調整する制度。これまでに43品目が対象となり、28品目が評価を終えている。
専門組織がこの日提示した意見書は、(1)分析対象集団と比較対照技術の設定、(2)費用対効果の品目指定、(3)分析プロセスの見直し、(4)価格調整の対象範囲―について現行制度の課題や対応策をまとめたもの。
(1)の比較対照技術の設定は現在、「臨床的に幅広く使用され、分析対象技術によって代替されることが予想される技術の中から、治療効果がより高いもの」を1つ選ぶルールとなっている。しかし1つに絞るのが難しい事例もあることから、比較対照技術のあり方の検討を要請した。
(2)では、保険適用時に指定基準を満たさなかった品目や一度評価を終えた品目が、市場拡大などで指定基準を満たす可能性が出てきた場合について、具体的な選定手順を明確化することや、検証対象の増加に対応できる運営体制の検討を求めた。
(4)では、現行ルールの価格調整の対象範囲は、①類似薬効比較方式で算定された品目及び、原価計算方式で算定された製品総原価の開示度が50%以上の品目=有用性系加算部分、②原価計算方式で算定された製品総原価の開示度が50%未満の品目=営業利益及び有用性系加算部分―となっている。これに対して費用対効果評価は全体の費用を分析対象としており、評価時点における分析対象と価格調整として反映する対象の範囲に差異がある。このため諸外国の事例も参考にしながら、価格調整の対象範囲のあり方について検討することを提言した。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は価格調整の対象範囲について、「有用性系加算だけでなく、適用される加算の範囲を広げるべきだ」と指摘。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)もこれに賛同し、「より広範囲を価格調整の対象とするべきだ」と拡大する方向での見直しを求めた。