QT間隔を延長する薬剤は多岐にわたり、Webサイト”CredibleMeds®”が情報アップデートに取り組んでいる。一方ロスバスタチンは上記サイトには掲出されていないものの、QT延長の可能性が大動物を用いた検討から示唆されている[Plante I, et al. 2012]。
そこで韓国・亜洲大学校のYeryung Koo氏らは自施設大規模データベースを用い、ロスバスタチンがQT間隔に及ぼす影響をアトルバスタチンと比較した。ロスバスタチンは確かにQT延長リスクが高いようだが、生存への悪影響は確認されなかった。Sci Rep誌、5月19日号掲載論文から紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、亜洲大学校病院データベースから抽出したQT延長5万8505例とQT間隔正常の対照38万6077例である。
まずQT延長検出前7日間の服用率を比べると、ロスバスタチンが2.7%だったのに対しアトルバスタチンは0.9%だった。次に対非服用例のオッズ比を算出すると、QT延長の可能性がある薬剤の影響などを補正後もロスバスタチン例では、1.30(95%信頼区間[CI]:1.21-1.39)の有意高値だった。一方、アトルバスタチン例は0.98(0.89-1.07)であり、非服用例とリスクに差はなかった。
さらにヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた検討も実施したところ、ロスバスタチンのみ、活動電位への影響とNa、Caチャネルの抑制が観察された。
ただしQT延長リスク上昇が必ずしも転帰増悪につながるわけではなさそうだ。
韓国全国保険請求データベース内の105万6572人を解析した結果では、ロスバスタチン例の死亡率は1.4%、アトルバスタチン例2.5%だった。ロスバスタチン例における諸因子補正後のHRは0.95(0.89-1.01)で、アトルバスタチン例と有意差はない。
ロスバスタチン服用に伴うQT延長は「重篤な転帰増悪をもたらすタイプではない」可能性をKoo氏らは指摘している。
本研究は韓国食品医薬品安全処から資金提供を受けた。